Research Abstract |
生体適合性に優れた新規歯科用レジン材料を開発するために,種々の官能基をもつモノマーおよびポリマーについて,分子構造と細胞毒性の関係を調べるために,それら化合物を接種したヒト歯髄線維芽細胞(HPF)に対する応答性(増殖)から検討した.その結果,歯科用モノマーの基本となるアクリル酸(A)やメタクリル酸(M)におけるHPFに対する応答性を,AおよびBの飽和化合物であるプロパン酸(P)と2-メチルプロパン酸(I)を比較として用い調べた.AとPの50%細胞増殖阻止濃度(IC50)は約2mMであり,細胞毒性の強さは,A=P>M>Iとなった.分子量が小さい直鎖脂肪酸は毒性が強く,分子鎖長が長く,分枝状で飽和のものほど毒性は低い.さらにカルボキシル基の数を増した飽和多価カルボン酸について検討した.リンゴ酸,酒石酸,クエン酸,トリカルボン酸,テトラヒドロフラン-2,3,4,5-テトラカルボン酸,およびポリマーのポリアクリル酸,ポリマレイン酸,ポリイタコン酸,ポリアコニット酸では,5mM濃度の添加培養液をHPFに接種しても細胞毒性は認められなかった.分子のカルボキシル基の数は,細胞毒性にほとんど影響されなかった.また,カルボキシル基以外の官能基をもつ機能性モノマーについて検討した.用いた機能性モノマーとしては,アクリル酸(A),3-アクリロキシプロパン酸(AP),2-アクリロキシエチルリン酸(AEP),2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸(AMPS)である.リン酸基をもつAEPの細胞毒性は,1mM接種で著しい細胞毒性を示し,ほとんどの細胞は死滅した.一方,スルホン基をもつAMPSの毒性は,非常に少なく,歯髄や歯肉に触れる可能性が高い接着機能性モノマーの官能基として有効であることが分かった.
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