Research Abstract |
海綿より単離されたアデニン-ジテルペン系アルカロイドasmarine A-F合成の基礎研究として,昨年度までに三環性複素環部分に相当する[1,4]diazepino[1,2,3-gh]purine骨格の合成法を確立している.今年度はasmarine類のジテルペン部分の構築を検討し,以下の研究成果を得た. 1.Asmarine A, D, Eのジテルペン部を構成するトランスデカリン部分の合成のため,2-methyl-1,3-cyclohexanedioneとethyl vinyl ketoneの不斉Robinson環化により(4aR)-(-)-1,4a-dimethyl-4,4a,7,8-tetra-hydronaphthalene-2,5(3H,6H)-dione[(4aR)-1]を得た.この非共役ケトン部をアセタール化後,Li/NH_3で還元し,TMSC1でトラップし好収率でトランスデカリン骨格を有するシリルエノールエーテル体へと導いた.このものの1位への立体選択的1炭素増炭反応および2位ケトン部へのWittig反応後,イリジウム触媒を利用するhydroxy-directed reductionによりトランスデカリン環上の全ての立体化学が天然品のそれらと一致する化合物を得た.今後,側鎖の変換を経て複素環部分を導入する計画である. 2.Asmarine B, C, Fのジテルペン部を構成するシスデカリン部分の合成のため,上記1と同様の反応で(4aS)-1を合成した.つづいてこれをピペリジン中接触還元しシスデカリン体を得た.このものの1位でのシリルエノールエーテルの形成を種々条件下検討した結果,DMF中,N-methyl-N-trimethyl-silylacetamideを利用することにより収率93%,選択性95%で目的とする化合物を得ることができた.しかし,このものの1位での増炭反応は期待する立体化学を有するものが得られず,主生成物の2位でのWittig反応,還元を経て生成した化合物のシスデカリン上の立体化学は天然品のそれと1,2位で異なるものであった.以上の知見は今後,1位の置換基の導入法を逆にすれば目的の立体化学を有するシスデカリン体が得られることを示唆している.
|