2000 Fiscal Year Annual Research Report
東南アジア産ミカン亜科基原薬用植物の化学変異と民族生薬学的観点からの比較研究
Project/Area Number |
12672064
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
木下 武司 帝京大学, 薬学部, 助教授 (10107386)
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Keywords | ミカン亜科 / ゲッキツ / 薬用植物 / 形態的多様性 / 化学的多様性 / 形態分類学 / 化学分類学 |
Research Abstract |
1、フィリピン国立博物館に所蔵されるフィリピン国内及び国外周辺地域から採集された54点のゲッキツ(Murraya paniculata)のさく葉標本、並びに本年度のフィールド調査において採集したゲッキツ標本を鑑定し比較形態分類学的検討を行った結果、以下の知見が得られた。 (1)中国南部〜台湾〜沖縄産ゲッキツとフィリピン及びその周辺地域に産するゲッキツは小葉及び果実の形態により区別することが可能である。前者は小葉が小さく果実は卵形〜球形で頂端は尖らないのに対して、後者は大型の小葉が多く成熟果は長卵形で頂端は尖り、未熟果はくちばし状に著しく曲がる。 (2)台湾蘭嶼の特産とされた変種ナガミゲッキツ(Murraya paniculata var.omphalocarpa)と全く同じ形態的形質を示すものがバターン、バブヤン諸島から採集されていることが明らかとなった。しかし、フィリピン諸島に分布するゲッキツとの形態的差異は少なく、変種として区別するのは困難である。 (3)中国の黄成就によるM.paniculataとM.exoticaの区別(中国植物誌43巻2号、1986年)は中国産ゲッキツだけに基づくものであり、フィリピン産などを検討対象に含めると全く適合しない。 2、ゲッキツの化学分類学を構築することを目的として、1998年8月にインドネシア東ヌサテンガラ州コモド国立公園において採集されたゲッキツ変種M.paniculata var.zollingeriの葉について化学成分研究を行った。その結果、murrangatin、murpanidinなど9種以上のクマリン誘導体を単離、同定した。フラボンは全く検出されず、いずれの物質もphebalosinまたはdehydroostholを前駆体として生合成されると思われるものであり、他地域産ゲッキツとは著しく成分相を異にすることがわかった。
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