2001 Fiscal Year Annual Research Report
加齢動物の脳における酸化修飾タンパク質の役割:運動による酸化ストレスへの介入研究
Project/Area Number |
12672126
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Research Institution | Toho University |
Principal Investigator |
後藤 佐多良 東邦大学, 薬学部, 教授 (10012650)
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Keywords | 酸化ストレス / 活性酸素 / タンパク質カルボニル / 異常タンパク質 / プロテアソーム / 脳 / 運動 / 学習記憶 |
Research Abstract |
運動は、活性酸素の産生を高め、細胞機能を損なう可能性がある反面、健康に良いとされている。適度な運動は心血管系に有益な影響をもつ。しかし、学習・記憶といった認知機能に対する運動の影響については、不明な点が多い。タンパク質に注目した研究、とくに、穏やかな定期的運動の効果を見たものはない。本研究の目的は、定期的運動が脳の酸化傷害タンパク質の蓄積と認知機能におよぼす影響を調べることである。本年度は、以下の研究を行った。 【材料・方法】若齢(1ヶ月齢)と中齢(14ヶ月齢、いずれも運動開始時)のラットに一日60分、週5回の水泳運動を6週間、続いて90分の同運動を3週間行わせたのち、脳を摘出し、カルボニル化タンパク質をカルボニル試薬2,4.ジニトロフェニルヒドラチン(DNPH)反応による比色定量で測定するとともに、カルボニル化タンパク質の種類を調べるために抗DNPH抗体を用いたウエスタンブロット解析を行った。 【結果】脳タンパク質カルボニル基は、若齢、中齢ともに運動によって有意な減少が観察された。ウエスタンブロット解析のシグナル強度の低下によっても確認された。分子量と全タンパク質中の相対量から判断して、ニューロフィラメントおよびチューブリンが主要なカルボニル化タンパク質と考えられた。 【考察】本研究により、穏やかな定期的運動がラット脳の酸化修飾タンパク質を減少させることが明らかになった。この変化と、同時に見られた学習・記憶能力の改善から、両者に何らかの関連がある可能性を示唆している。本研究では、脂質過酸化の指標としてTBARS、DNA酸化傷害の指標として8-ヒドロキシグアノシンを測定したが、両者とも運動による影響は見られなかった。したがって、運動の認知機能改善効果は、酸化ストレス一般の軽減によってもたらされるのではなく、タンパク質酸化傷害の蓄積軽減が重要であると考えられる。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] Radak Z, Goto S et al.: "Single bout of exercise eliminates the immobilization-induced oxidative stress in rat brain"Neurochem Internat.. 39. 33-38 (2001)
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[Publications] Hirokawa K, Goto S.: "Aging Research Worldwide. Research on biomedical gerontology in Japan"Exp.Gerontol.,. 36. 1581-1597 (2001)
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[Publications] Radak Z., H, Goto S.et al.: "Adaptation to Exercise-Induced Oxidative Stress: From Muscle to Brain"Exercise Immunology Review. 7. 90-107 (2001)
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[Publications] Goto S, et al.: "Implications of Protein Degradation in Aging"Ann. New York Acad. Sci. 928. 54-64 (2001)
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[Publications] Ishii N, Goto S, Hartman PS.: "Protein oxidation as it relates to aging in the nematode Caenorhabditis elegans". Free Radic Biol Med.. (in press). (2002)
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[Publications] Goto S, Radak Z, Takahashi R.: "Oxidative Stress and Aging: Advances in Basic Science, Diagnostics, and Intervention"World Scientific Publishing Company(in press). (2002)