Research Abstract |
癌細胞の分化とアポトーシスを構造選択的に制御するビタミンD誘導体の開発を目的として,本年度はA環2位に様々な置換基を導入したアナログ,3位及び4位にメチル基を導入したアナログ,5,6-トランス型アナログ,20位エピ化アナログ,側鎖に酸素原子を導入したアナログ,側鎖の24位,26位,27位を伸長させたアナログ,側鎖の様々な部位にメチル基,エチル基を導入したアナログとそれらのエピ化アナログ,上記のハイブリッドアナログなど,A環と側鎖を中心とした多種の活性型ビタミンアナログの基本的な生理活性を評価するところから実験を開始した。生理活性の評価は,VDR結合能,遺伝子転写活性,細胞周期制御,分化誘導能,アポトーシス誘導能,DNA断片化能などを測定することにより行い,以下のような研究実績を得た。 1.A環1位あるいは3位水酸化の異性化は,2位メチル基の有無,側鎖20位の異性化に関係なく,転写活性・分化誘導能を低下させた。一方,側鎖20位の異性化は,転写活性・分化誘導能を低下させた。A環2α位へのメチル基の導入は,VDR結合能及び転写活性を増強させ,20位の異性化を伴うことにより,活性は相乗的に増強した。これに対し,A環2β位へのメチル基の導入は,生物活性を欠失させた。しかし,1,3位の水酸基を異性化し,同時に側鎖20位を異性化することにより,天然型よりも強い転写活性・分化誘導能を生み出す構造となった。この1,3,20位の同時異性化の効果は,2β位にメチル基が導入された場合にのみ認められた。 2.アポトーシス誘導能は,強い転写活性を示す誘導体には全く認められず。逆に転写活性・分化誘導能を示さない誘導体にのみ認められた。アポトーシスを誘導する誘導体は,1位あるいは3位水酸基のいずれか一方が異性化した構造を有し,2位メチル基の有無や立体配置には全く無関係であった。 1.および2.のの結果から,1,3位水酸基が天然型と同じ立体配置の場合,A環2α位へのメチル基の導入,側鎖20位の異性化は,転写活性及び分化誘導能を増強させる有効な構造モチーフとなること,逆にA環1位,3位水酸基の異性化はアポトーシスを特異的に誘導できる構造モチーフとなることを明らかにした。
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