2001 Fiscal Year Annual Research Report
虚血性心疾患発症における機能性変異遺伝子の相加効果の解明
Project/Area Number |
12672197
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
小林 公子 筑波大学, 基礎医学系, 講師 (90215319)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
濱口 秀夫 筑波大学, 基礎医学系, 教授 (00091918)
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Keywords | 虚血性心疾患 / 機能性変異遺伝子 / 脂質代謝異常 |
Research Abstract |
虚血性心疾患はその発症に遺伝要因と環境要因が複雑に関与している多因子性疾患である。虚血性心疾患の予防法を開発するためには、遺伝的リスクファクターとなっている個々の遺伝子を同定すること、およびリスクファクターの組み合わせと発症の危険率との関係を明らかにすることが重要である。本年度はまず、虚血性心疾患のリスクファクターとして重要な脂質代謝異常症と関連する遺伝子の検索を行った。Peroxisome proliferator-activated receptor α(PPARα)はリガンド要求性の転写因子で、脂肪酸の酸化や脂質の運搬に重要な役割を果たしている。健康な成人を対象としてPPARα遺伝子の変異と血清脂質値との関連を調べたところ、Val227Ala多型が検出され、Ala227対立遺伝子を保有する個体はそれ以外の個体に比べて総コレステロール値が低いことが判明した。この傾向はとくに閉経前の女性で強く、PPARαが関連する脂質代謝はエストロゲンの影響をうけることが示唆された。このVal227Ala多型と虚血性心疾患発症の関連について分析したが、対象とした虚血性心疾患患者には男性が多いこともありこの変異が虚血性疾患発症と関連するという証拠は得られなかった。PPARα遺伝子以外にも、虚血性心疾患の基礎疾患である高血圧、糖尿病、高コレステロール血症、低HDLコレステロール血症、高Lp(a)血症、血栓症などとの関連が示唆されている11個の遺伝子(APOE、MTHFR、AGT、ACE、LPA、HTT、LIPC、ADRB3、LPL、PAII、ENOS)の機能性変異と虚血性心疾患発症との関連を調べた。上記の遺伝子のうち、APOE、MTHFR、AGT、LPAの機能性変異と虚血性心疾患との間に関連がみられたが、これらの疾患発症に対するOdds比は1.4から1.9であり、その効果は単独ではあまり強くなかった。しかし、これらの遺伝子を組み合わせて機能性変異遺伝子の保有数と虚血性心疾患発症との関連を調べたところ、保有する変異遺伝子の数が増えるにつれてOdds比は上昇した。このことは、作用の弱い感受性遺伝子の相加効果が虚血性心疾患の遺伝要因として重要であることを示唆している。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] Yamakawa-Kobayashi K et al.: "A Val227Ala polymorphism in the peroxisome proliferator activated receptor α (PPARα) gene is associated with variations of serum lipids levels"J. Med. Genet.. (印刷中).
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[Publications] Yamakawa-Kobayashi K et al.: "Relation of the -514C/T polymorphism in the hepatic lipase gene to serum HDL and LDL cholesterol levels in postmenopausal women under hormone replacement therapy"Atherosclerosis. (印刷中).