2001 Fiscal Year Annual Research Report
認知障害のある高齢者の意思に対する看護者の認識過程
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12672348
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Research Institution | The Japanese Red Cross College of Nursing |
Principal Investigator |
坂口 千鶴 日本赤十字看護大学, 看護学部看護学科, 助教授 (60248862)
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Keywords | 認知障害 / 高齢患者の意思 / 看護者の認識過程 |
Research Abstract |
1.対象の属性:対象は都内の総合病院2病棟に入院していた平均年齢75.5歳の認知障害のある高齢患者6名(女性4名、男性2名)と、これらの患者に関わった平均年齢26.O歳の看護者17名であった。2.認知障害のある高齢患者の意思への看護者の認識過程:日常生活援助における認知障害のある高齢者と着護者との相互作用において、高齢患者の意思への看護者の認識過程は、患者が主張する意思と看護者が患者に対して抱く日常生活のケア、治療処置への期待との間で折り合いをつけていく【意思との折り合い】の過程であった。この過程において、看護者は患者の<言動の変化に注目>して、その言動が何を意味しているのか聞き込むことによって言動から<意思を読み取り>、また患者自身やスタッフから新たな情報を得て<読み取りの確認>を行いながら、患者の<意思に対する決定>に至ることで、患者の《意思の確かめ》を行っていた。高齢患者の意思と看護者の期待との狭間の中で決定に至る過程には、患者の不快の意思を見積もりながらケアを決定していく〔不快の見積もり〕、患者の言葉だけでなく、表情、動作から患者の拒否の意思を見極めてケアを決定していく〔意思の見極め〕、患者の意思を受け入れながらも看護者の期待を提示し、患者を納得させていく〔意思とのすり合わせ〕、看護者の期待と相反する患者の意思を阻止しようとする〔意思とのせめぎ合い〕があった。この過程を繰り返す中で見られた高齢患者の意思とは、今までの生活習慣と看護者から指示される生活行動の間で自分のペースを維持しようとする自己のペースの維持、治療による日常生活への制限に対して自己の欲求を訴える自己の欲求の実現、入院による環境の変化で自分の所有物や家族が身近に存在しなくなったことへの訴えである自己に属するものへの喪失感であった。
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