Research Abstract |
近年,内臓脂肪の蓄積が生活習慣病の発症基盤となることが報告されている.この内臓脂肪量の評価法に関してはこれまでCTスキャンやWest/Hip比などが使用されてきた.今回はCTスキャンなどの特殊な医療機器を使用せずに多周波インピーダンス,皮下脂肪厚,周径囲などの身体計測値を用いて簡便で精度の高い内臓脂肪面積を推定することを目的とした.初年度は疾患者や高度肥満者を除外するため体格ではBMI25未満,内臓脂肪面積100cm^2以下であること,さらに空腹時の血糖,インスリン,総コレステロール,HDLコレステロール及び中性脂肪を測定し糖・脂質代謝が正常である男性23名と女性15名を対象とした.男女の年齢,BMI,皮下脂肪面積及び内臓脂肪面積の平均値は,年齢(32.5歳,25.5歳),BMI(21.8,21.4),皮下脂肪面積(90.5cm^2,131.5cm^2),内臓脂肪面積(47.4cm^2,39.9cm^2)であった.形態計測は臍高部CT像,上腕囲,腹囲,胴囲及び大腿囲である.また,皮下脂肪厚は上腕部,肩甲骨下部,臍部,腸骨上部,大腿部の前・後面であり,インピーダンスの電極の位置は(1)右肩-左臍部,(2)右肩-右腰部,(3)右背中-左臍部,(4)臍部の右左両側の4箇所である.細胞内(Re),細胞外(Ri)のインピーダンス値は男女とも(1)と(2)で高値を示し,(3)と(4)では低値を示した.次に内臓脂肪量と高い相関関係を示す項目は,男性で(2)Ri:0.81,腹囲:0.73,(1)Ri:0.73,肩甲骨下部皮脂厚:0.71,(1)Re:0.71,TG:0.71の順であった.女性では腹囲:0.90,(4)Ri:0.78,腹部皮脂厚:0.75,(3)Ri:0.70,肩甲骨下部皮脂厚:0.70であった.また,内臓脂肪面積を目的変数として重回帰分析を求めた結果,内臓脂肪面積=199.9*West/Hip比+0.59*(4)Re+1.15*大腿部後面皮脂厚-154.8で重相関係数は0.81あった.以上より,内臓脂肪面積の推定には腹囲,West/Hip比,(4)Reなどが強く関与することが示唆された.
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