Research Abstract |
これまで,初心者および男子熟練泳者の力発揮と動作解析について報告したが,今回は,中等度熟練者を加えたそれぞれ3者間の関係において,力発揮とその動作がどのようになるのかを明らかにすることを本研究の目的とした.けのび動作は,壁を蹴ってから止まるまでとし,前半の5回と,十分に休憩をとった後半の5回,計10回の試技を行った.被験者は,中等度熟練者として大学競泳選手13名(男子6名、女子7名、年齢20.1±1.2歳、身長165.9±7.7cm、体重61.7±9.7kg、競技歴11.7±5.7年)であった.画像解析は,被験者の右側方からデジタルビデオカメラ(30f.p.s)で撮影し,DKH社製FDWを用いて解析を行った.壁を蹴る時に発揮された力は,水中フォースプレートによって信号を記録,MacLab/8sでA/D変換,算出し,VTR画像と同期してけのび動作の評価も合わせて行った. その結果,中等度熟練者の力積と到達距離との間には,僅かに有意な相関は得られなかったが,その傾向が伺われた.熟練泳者では有意な相関が見られた(2000合屋).一方,力積の平均値は,中等度熟練者の方が熟練者よりも大きな値を示した.しかし,けのびの到達距離は熟練者の方が中等度熟練者に比べて大きかった.また,重心の移動軌跡の変化は,初心者が前方斜め下であるのに対して中等度,熟練の双方の被験者はほぼ水面と平行な軌跡をたどることがわかった.この時の重心の投射角度は初心者が約10度,中等度熟練者が約5度前後,熟練者が約0度付近であった.これは,初心者や中等度熟練者が瞬間的な力発揮によってけのびの到達距離が影響されるのに対して,熟練泳者はリリース後の力発揮のパターン,力積,ストリームライン姿勢の取り方などによって変化することが明らかになった.すなわち,壁を蹴る時,十分な「ため」の姿勢をとりながら蹴り出し(高橋1983),リリース後は,水の抵抗の少ない姿勢の保持と40〜60cm位の適切な水深(清水ら1997,Lyttle et al. 1999)を保持しながら潜行していくことがけのび動作の巧拙を決定する重要な要因であると考えられた.
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