2000 Fiscal Year Annual Research Report
大都市圏における農地利用の多機能化とその調整メカニズムに関する地理学的研究
Project/Area Number |
12680080
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
菊地 俊夫 東京都立大学, 理学研究科, 助教授 (50169827)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山本 充 埼玉大学, 教養学部, 助教授 (60230588)
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Keywords | 大都市圏 / 都市的土地利用 / 農業的土地利用 / 多機能化プロセス / 多機能型農地利用 / 調整メカニズム / 環境保全 / 生産緑地 |
Research Abstract |
大都市圏における農業的土地利用と都市的土地利用の競合は、多くの農地を都市的土地利用に変化させてきた。このような状況の中で、農地の利用価値も多様化するようになり、大都市圏の土地利用分析も居住環境の視点が経済的な要因とともに重要になってきた。つまり、農地は農業空間としてだけでなく、都市アメニティの緑地空間、あるいは都市住民の余暇空間や災害避難の防災空間など、多様な機能をもつ空間として存在するようになった。そのため、本研究は日本各地や世界の都市圏における農地利用の多機能化の実態を把握し比較しながら、農地の多機能化プロセスを農家・都市住民・行政・開発業者間の利害調整(regulation)メカニズムの在り方から分析してきた。その結果、日本の都市圏では農地の農産物生産機能が基盤にあり、都市化の進展とともに土地供給機能が土地収益性との関連で付加されるようになる。つまり、農地の経済的機能が卓越し、農家-都市住民-行政-開発業者の調整メカニズムは経済的な利害関係に基づいて行われてきた。しかし、農地に余暇機能、環境保全機能、緑地機能、防災機能、アメニティ機能が付加されるようになると、農家-都市住民-行政-開発業者の利害はポリティカルエコロジー的に対立するようになり、その調整メカニズムが非経済的な価値観に基づいて行われていることが予察としてわかった。このようなメカニズムは、多機能型農地利用が都市計画で重要な役割を果たしているパリ大都市圏やフランクフルト大都市圏と、さらに多機能型農地利用が環境保全と結びついているシドニー大都市圏と異なる様相にあることが理解できた。今後の課題としては、日本の多機能型農地利用における調整メカニズムをさらに詳細に究明することが残されている。
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Research Products
(5 results)
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[Publications] T.Kikuchi,G.M.Zhang,Y.Himiyama and H.Miyazawa: "Map Analysis of Land Use and Cover Changes in the Northern Part of Huabei Plain, China"Geographical Reports of Tokyo Metropolitan University. No.35. 99-111 (2000)
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[Publications] 張貴民,菊地俊夫: "中国における土地法の整備と最近の土地政策"札幌国際大学地域総合研究センターTechnical Report. No.40. 1-19 (2000)
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[Publications] T.Kikuchi and L.W.Cui: "Sustainable Development of Corporate Farm and its Regional Conditions in the Inner Fringe of Tokyo Metropolitan Area"Progress in Research on Sustainable Rural System. No.4(印刷中). (2001)
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[Publications] 山本充: "浦和市・与野市・大宮市における農業的土地利用の変化"埼玉地理. No.25(印刷中). (2001)
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[Publications] 山本正三,菊地俊夫,山本充 他: "自然環境と文化-世界の地理的展望-"大明堂. 256 (2001)