Research Abstract |
本研究は,生活者の意識・行動の変容に対して,地域情報がどのような影響を持つかを検討し,有効な情報提供のためにはどのような内容がどのように発信されればよいかについて,とくに生活者の変容の視点を,環境配慮意識を高め,環境配慮的行動をおこすことに集約して考察するものである。 昨年度は,地域情報に関する実態調査として,自治体から発信される具体的な啓発用資料(印刷物)の収集を行い,これら具体的な情報が,生活者の環境配慮的行動をおこすための要件を満たしているかどうか社会心理学的手法を用いて検討したが,殆どのものがその要件を充分には満たしていなかった。これまで,地域情報は主に行政などから一方方向で流れてくる情報にすぎず,このような状況では生活者に意識の変容・行動の変容を促すことは容易ではないと考えられた。 そこで,環境配慮型社会構築のためにはシチズンシップ,パートナーシップが重要であるので,本年度は,地域情報とこれらの関係を考察した。その結果,地域情報はシチズンシップ,パートナーシップの醸成のために大変大きな役割を果たすと考えられた。その中で,生活者は地域情報の受容者としてだけでなく,発信者としても関わっていくことが重要で,それにより生活者の意識と行動の変容が起こり得ると考えられた。 地域情報が生活者の意識と行動の変容を促すためには,すべての客観的な情報がそれを求める人には等しく提供されるようなシステム作りと同時に,受信者としての生活者には,情報の内容への深い理解,情報が提示する問題点についての正しい認識,情報の質の評価,さらには,それを適切に用いて組み立てた,新たな情報の発信者としての自覚の育成が求められると考えられる。生活者自身が生活の主体者として行動していくためには,地域情報は今後ますます重要になるであろう。
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