Research Abstract |
奈良県の公立小学校第5学年で行った「単位量あたりの大きさ」の授業を,様々なデータを駆使し,多角的に考察した: (1) 同単元の別の学級での授業との比較 (2) 本学級の授業における注目児童の学習過程の質的な考察 (3) 本学級の児童の,1年間を通しての,比例の筆記調査問題に対するアプローチの変化 その結果,次のようなことがわかった。 (1)に関しては,本学級では,児童が教室に持ち込む様々なアプローチが一貫して重視され,児童による発表と交流がみられた。授業の中で,「1当りの大きさ」とそれを求める除法の手続きは,別の学級程の権威を有していなかった。 (2)に関しては,11時間の授業の前後で行った注目児童の筆記調査の考察により, ・児童の比例的推論のレベルは,指導の前後で大きな変化はみられない。 ・むしろ,児童の表記の使い方に変化がみられる。児童は,特定の表記を,思考を進める上で使うようになった。 ことがわかった。更に,児童の授業中の活動の分析から, ・授業の中で,表記を用いて思考を表現したり,表記を解釈したりすることが,児童の認知的変容に寄与している。 ・児童によって,思考の進展に寄与する表記(significant notation)が異なる。同じ授業を受けていても,表記に対する注目や関心,挑戦が異なる。 ・Significant notationの生起の過程の考察から,授業では,教師がどの程度意図しているかによらず,表記(方法)を媒介とするコミュニケーションがなされている。 ことを指摘することができる。 (3)に関しては,他の2学級に比べて,本学級の児童の正答率が徐々に,しかもコンスタントに増加し,また,複合ユニットを用いたアプローチが増加していた。
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