2000 Fiscal Year Annual Research Report
基礎造形教育におけるデッサンの目的と意義-絵画作品の幾何学的実証を通して-
Project/Area Number |
12680239
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
蝦名 敦子 弘前大学, 教育学部, 助教授 (20302010)
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Keywords | 基礎造形教育 / デッサン / 幾何学 / 石濤 / 『画語録』 / 一画論 |
Research Abstract |
現在基礎的資料の準備中である。 同時に、初年度は中国画論の中でとくに注目したいと思っている石濤の『画語録』について検討した。また、彼のかって住んだ中国の揚州に行き、その足取りについて現地を訪ねた。揚州にある何園に行ってみて、現在石濤の美術館建設が進められていることがわかった。また、石濤の代表作の一つである「廬山観瀑図」については、現地を訪れ作品との比較検証をした。その結果、画面に画かれた風景は、廬山の中にある三畳泉という滝であり、現在でもほとんど同じように場所があることが確認できた。従ってこの作品についても、実景に基づいて作画されたことが判明した。このように、現地を訪れることにより、一層石濤の存在を身近に感じることができ、また、実際の風景を見て、実景と作画された絵画の両者を対比してみることにより、画論の内容がより現実感をもってくる。 今後は、この石濤の代表作の検証をさらに進めると共に、画論と照らし合わせながら彼の絵画観を考察し、改めて『画語録』の重要な概念の一つである一画論について再考しながら、作画の基になるものの見方-デッサンについて検討する。その一方で、西洋のデッサン論についても、さらに考察を深めていきたい。 このような理論的考察を背景としながら、その両者に通底する秩序-バランス感覚の問題について、さらに、本研究の副タイトルにあるようにデーター化を進めていきたいと思っている。画家が残す言葉の中に共通して見いだされる真髄について抽出し、それがどのように視覚的に認められるのか、実際に造形化されたデッサンや絵画の中に求め、視覚的にも証明されるように形で、その実証に取り組みたいと思っている。
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