学習者のスキーマ形成による算数文章題解決への支援

2001 Fiscal Year Annual Research Report

• Project/Area Number: 12680242
• Research Institution: MIYAGI UNIVERSITY OF EDUCATION
• Principal Investigator: 西林 克彦 宮城教育大学, 教育学部, 教授 (70012581)
• Keywords: 算数 / 文章題 / スキーマ / 補助図 / 加減の3用法 / 立式

Research Abstract

文章題の困難さは計算などの実行過程ではなく、文章を読み取る過程、とくに文同士の関係をまとめ上げる「統合過程」にある。しかし、「統合過程」は複合的で一足飛びに行われるため、細かい分析ができず、従来の分析的またボトムアップ的なアプローチでは困難を生じているのが現状である。本研究では、これまでのアプローチとは全く逆に、学習者にスキーマを積極的に確立させ、それを使って文章題に向かわせるというトップダウン的なアプローチで、文章題の困難を克服させる可能性を探った。
前年度からのこの路線を継続し、本年度に得られた主な成果は以下のようなものである。
1.前年度に「関係文」における3項関係についての指導の見通しを得ていたが、さらに「関係文」理解が比較される対象の情報が既知の場合には比較的容易であり、未知の場合には困難であるとの確証を得て、よりきめ細かい指導が可能になった。
2.加減の文章題の主たる困難は、意味の拡張によるものと、3用法によるものに大別できることを理論的・実証的に整理できた。
3.前項の整理をもとに、加減の各種文章題に関する指導の順序性、および、テープ図などの図式の導入によるスキーマ強化の適切な時期に関して、一定の見解と見通しを得た。すなわち、単純な第1用法の操作をベースに加減の定義と式の導入を図り(ここでは補助図の必要性は少ない)、合併、求差、求補などの意味拡張過程において、補助図を導入する(ここでは関係が複雑になるので、補助図の必要性と効果がある)。そして、補助図の有効性を実感させた後、時間順序性がある第2第3用法に使い広げさせると言うものである。

Research Products

• [Publications] 西林克彦: "得意の伸ばし方・生かし方"児童心理. 10月号. 10-15 (2000)
• [Publications] 西林克彦: "学力構造から見た学力低下と基礎・基本"学校運営研究. 8月号. 46-47 (2001)
• [Publications] 西林克彦: "なぜ平行四辺形の公式もなくさないのか"教育と医学. 10月号. 33-39 (2001)
• [Publications] 西林克彦: "なぜ「自ら学び自ら考える力」をはぐくんでこられなかったのか"教育展望. 4月号. (2002)