2000 Fiscal Year Annual Research Report
学校数学カリキュラムにおける数学的概念の取り扱い方に関する認知意味論的研究
Project/Area Number |
12680272
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
関口 靖広 山口大学, 教育学部, 助教授 (40236089)
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Keywords | 数学的概念 / 認知意味論 / 認知モデル |
Research Abstract |
本研究では、近年発展している認知意味論に依拠して、算数・数学のカリキュラムにおける主要な数学的概念の捉え方、位置づけ、および導入・発展・精緻化のプロセスについて分析し、どのような認知モデルがどのように利用されているかをあきらかにする。 平成12年度は,まず、認知科学における認知意味論研究の全体像をレビューし、分析のための枠組みを暫定的に設定した。主に,G.Lakoff,M.Johnson,R.E.Nunezらの研究を中心に検討し,認知モデルの構成原理,役割,種類などを明確にした。また,彼らの研究を教育現場のデータの分析に活用するためには,より具体的な道具立てが必要であることが見いだされた。それに基づき、初年度として、「意図されたカリキュラム」としての日本の教科書や教材を分析し,算数・数学の諸概念がどのように取り扱われているかを検討した。その結果,数,集合,文字,方程式,不等式,関数,証明,合同,相似,等々,主要な概念の取り扱いの背後にみられるさまざまな認知モデルが同定された。これは,認知意味論研究で論じられている認知モデルが決して特殊なものでなく,数学学習の主要な部分に関わっていることを示している。同時に,これまで個々の数学的概念についてばらばらに研究されてきた事柄を,認知モデルの視点から体系的にとらえることができる見通しも出てきた。今後は,カリキュラム全体の中で,認知モデルが相互にどのように関わり合っているかを検討する必要がある。 米国の教科書や教材等の資料も収集した。わが国のものとの比較分析は,資料が膨大ななため現在進行中である。暫定的ながら,日米の教科書では,認知モデルの抽象度や分布に顕著な相違があることが見いだされている。
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