Research Abstract |
本研究は,社会におけるジレンマ状況において,人々の協力行動が安定的に継続するかどうかについてゲーム理論による分析を行うことを目的としており,平成12年度,13年度,14年度の研究から得られた結果をもとに,本年度は以下のような成果を得た。 1.昨年度までの研究から,交渉ゲームめ定常的均衡点との関係が明らかになった,安定集合と調和集合の安定性を混合させて得られる新たな安定性をもった集合について,これを,「共有地のジレンマ」,「公共財供給をめぐるジレンマ」,「情報の流通をめぐるジレンマ」,「環境汚染のジレンマ」などの杜会的ジレンマ状況へ適用した結果を整理し,その共通点,相違点を明らかにした。 2.特に,情報の流通をめぐるジレンマについて,寡占産業における新技術のパテントライセンシングの問題を取り上げ,安定集合,調和集合および協力ゲームの解である交渉集合の概念を用いて分析するとともに,従来の非協力ゲームによる分析との相違点を明らかにした。 3.一般の2人ゲームにおいて、上記の新たな安定性を持った集合の性質を明確にした。 4.プレイヤーの努力水準を考慮に入れたファジーゲームの概念を新たに分析に取り入れ,その枠組みの中で,安定集合および調和集合の概念を再考し,これまでの分析との関連を明らかにした。 5.昨年7月9日〜12日にイタリアのウルビノで開催された「ゲーム理論とその応用」に関する国際会議,および8月25日〜29日に日本(東京)で開催された「非線形数学と凸解析」に関する国際会議に出席して,特に上記の4に関する研究成果を発表し,この研究の意味,今後の発展の方向などについて,参加者と有益な議論を行った。また,本年2月20日〜27日にイタリアのジェノヴァ大学数学科を訪れ,上記4の研究のその後の発展,および上記2の研究について同学科の研究者と今後の研究の発展にっいて,研究打ち合わせを行った。
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