2000 Fiscal Year Annual Research Report
重粒子線の微視的飛跡シミュレーションコードの研究開発
Project/Area Number |
12680503
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
上原 周三 九州大学, 医療技術短期大学部, 教授 (90038927)
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Keywords | モンテカルロシミュレーション / 重イオン飛跡構造 / full slowing down code / マイクロドシメトリ / 放射線生物作用 |
Research Abstract |
1.目的 モンテカルロシミュレーションによって得られた分子レベルの放射線飛跡構造(電離や励起の空間分布)は放射線影響研究に大きく貢献している。低エネルギー陽子とα粒子について、電荷交換過程と核弾性散乱を取り入れた新世代の重イオン飛跡生成コードの開発を試みた。 2.方法 0.3MeV/u以下のエネルギーではH^+やHe^<2+>のような裸のイオンとともに、電子捕獲によってH^0あるいはHe^+,He^0のイオンまたは中性原子が共存している。したがってモンテカルロシミュレーションにおいてはこれらすべての粒子に対する電離、励起、電荷交換、弾性散乱の断面積が必要となる。水分子についてのこれらの実験的・理論的断面積を収集整理し、コードの入力データに用いた。生成された飛跡データより、様々な物理量を求め、他のデータと比較し、コードの信頼性を確かめた。 3.結果 衝突阻止能、核阻止能、飛程の計算値は10%の精度でICRU49データ(1993)と一致した。陽子のW値は実験値とよく一致したが、α粒子については信頼できるデータがないため、はっきりした結論は得られていないが、高エネルギーの極限値は陽子のW値とほとんど同じ30.5eVであった。さらにマイクロドシメトリの見地から重要なパラメータである動径線量分布、制限阻止能、イベントサイズ分布なども飛跡データを解析することによって得られた。いずれも公表されたデータとのよい一致を示した。 4.結論 新たに開発した低エネルギー陽子コード(LEPHIST)と低エネルギーα粒子コード(LEAHIST)は世界的にも初めてのfull slowing down codeであり、飛跡構造研究におけるインパクトは大きい。これにより、とりわけ中性子や環境中重粒子の生物影響メカニズム研究の進歩が期待される。
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Research Products
(5 results)
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[Publications] S.Uehara,H.Nikjoo,D.T.Goodhead: "Comparison and assessment of electron cross sections for Monte Carlo track structure codes"Radiation Research. 152・2. 202-213 (1999)
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[Publications] S.Uehara: "Track structure code for low-energy protons"Japanese Journal of Medical Physics. 19・Sup61. 97-99 (1999)
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[Publications] S.Uehara,L.H.Toburen, et al.: "Calculations of electronic stopping cross sections for low-energy protons in water"Radiation Physics and Chemistry. 59・1. 1-11 (2000)
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[Publications] S.Uehara,L.H.Toburen,H.Nikjoo: "Development of a Monte Carlo track structure code for low-energy protons in water"International Journal of Radiation Biology. 77・2. 139-154 (2001)
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[Publications] S.Uehara,H.Nikjoo,S.Endo,D.T.Goodhead: "Radiation Research Vol.2, Congress Proceedings(分担執筆118-121頁)"Allen Press, Lawrence, KS, USA. 900 (2000)