2001 Fiscal Year Annual Research Report
環境要因の日周性が湛水土壌中のメタン生成微生物生態系の発達と鉄還元に与える影響
Project/Area Number |
12680517
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Research Institution | Yamagata Univ. |
Principal Investigator |
上木 厚子 山形大学, 農学部, 教授 (60143088)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
粕渕 辰昭 山形大学, 農学部, 教授 (00250960)
上木 勝司 山形大学, 農学部, 教授 (10111337)
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Keywords | 温室効果 / メタン生成古細菌 / 水田土壌 / 嫌気性細菌 / 鉄還元細菌 / 水稲 / 二価鉄 / 湛水土壌 |
Research Abstract |
湛水後の水田土壌ではO_2の枯渇後、発酵性細菌による有機物の分解と共に、硝酸塩、マンガン、鉄、硫酸塩等の還元が有機物の酸化と共役して進行し、これらの過程を経て生成される酢酸やH_2+CO_2を基質としてメタン生成古細菌によるメタンの生成が進行する。このうち、鉄還元細菌は三価鉄を還元して二価鉄を生成するが、その電子供与体として、メタン生成古細菌と同様、酢酸やH_2を消費する。一方、鉄還元細菌によって生成された二価鉄は水田土壌の還元的な環境を維持し、高いメタン生成活性を保証する役割を果たす。これまでの我々の検討で、晴天の日の湛水水田土壌の地温は、明け方に最低を示し、日射に伴い顕著に上昇し、日没と共に低下するという顕著な日周性を示すことが明らかになっている。また、特に土壌表層の酸化還元電位も、同様に日周性を示す。本研究では、このような日周条件下にある、水田土壌のメタン生成活性と鉄還元の関係について検討し以下の結果を得た。(1)湛水水田土壌から晴天の日に、一日のうちで地温が最低を示す明け方4時頃と、最高になる午後0時頃の二回、水田土壌の作土層を深さを変えて採取し、そのメタン生成活性を測定し、それぞれの時間におけるメタン生成活性の季節変化を調べた。2回の試料採取時間毎の地温の差は最大で10℃以上にも達した。土壌の二価鉄含有量は同じ日であれば採取時間が異なっても有意差は認められなかった。しかし、メタン生成活性は、明け方の試料の方が日中に採取した試料より有意に高い場合が多く、湛水土壌のメタン生成活性は日周変化をしているものと推察された。メタン生成活性と土壌の二価鉄含有量および地温との間の相関を調べたところ、明け方に測定した方が、日中に測定した場合よりいずれの場合も高い相関が得られた。この結果は、湛水土壌の微生物活性等を測定する場合の土壌試料の採取は、日中より明け方に行った方が安定した結果が得られることを示唆している。(2)実験室内で水田土壌を湛水状態で保温し、メタン生成活性と鉄還元活性の温度依存性を調べた。メタン生成活性の最適温度は通常40℃だったが、20℃以下ではメタン生成は殆ど進行しなかった。一方、鉄還元は10℃程度でも保温時間と共に確実に進行した。また温度を日周変動させて湛水土壌を保温した場合、基本的にその日平均温度に依存してメタン生成も鉄還元も進行し、メタン生成が活発に進行するためには、平均温度が少なくとも22℃程度以上になる必要があることが分かった。水田の湛水直後の地温は一般に低温であり、日射に伴って地温が日周変化しても、その平均地温は通常20℃以下で推移する。従ってこの時期には水田土壌中では鉄還元が優先的に進行し、生成された二価鉄が水田土壌の低い酸化還元電位を維持する役割を果たし、その後の地温の上昇と共にメタン生成活性が活性化されるものと考えられた。
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Research Products
(4 results)
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[Publications] Hattori, C., Ueki, A., Seto, T., Ueki, K.: "Seasonal variations in temperature dependence of methane production in paddy soil"Microbes and Environments. 16. 227-233 (2001)
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[Publications] Hattori, C., Ueki, A., Egashira, H., Fujii, H., Ueki, K.: "Factors affecting seasonal and vertical variations in methanogenic activity in paddy soil determined by the addition of methanogenic substrates"Soil Science and Plant Nutrition. 48(印刷中). (2002)
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[Publications] Fujimaki, Y., Mowjood, M.I.M., Kasubuch, T.: "Measurement of convective velocity of ponded water in a paddy field"Soil Sci.ence. 165. 404-411 (2000)
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[Publications] Hiraiwa Y., Kasubuchi, T.: "Temperature dependence of thermal conductivity of soil over a wide range of temperature(5-75℃)"European Journal of Soil Science. 51. 211-218 (2000)