2001 Fiscal Year Annual Research Report
長期モニタリングシステムによる林地からの実蒸散量の評価に関する研究
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12680518
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
田中 正 筑波大学, 地球科学系, 教授 (50015880)
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Keywords | アカマツ林 / ミズナラ林 / 樹液流速 / Granier法 / 吸水量と蒸散量 / 可能蒸発量 / 気孔閉鎖 / 日中低下 |
Research Abstract |
本研究では、研究対象地域として、筑波大学陸域環境研究センターに隣接するアカマツ林と筑波大学川上演習林内の天然ミズナラ林を選定した。前者は常緑針葉樹で平野部に位置し、後者は落葉広葉樹であり、山地原流域に位置している。樹液流速測定にはGranier法を採用した。この方法は、トレーサーとして用いる熱量が少ないために、樹木に与えるダメージが小さく、樹液流速の連続測定に適している。このセンサーを各試験木の地際と樹冠直下に設置し、吸水量と蒸散量の測定を行った。これと同時に、林内の各観測塔において正味放射量、光合成有効放射量および温湿度の測定を行った。 アカマツについては、日変化において顕著な変動傾向が見られた。すなわち、可能蒸発量の上昇に伴って、蒸散量と吸水量はほぼ同時刻に立ちあがり、蒸散量が午前中の早い時間にピークに達し、その後減少するのに対し、吸水量は滑らかに上昇して正午付近で最大となった。蒸散量と可能蒸発量の関係は、時計回りのループを描いており、気孔閉鎖による蒸散の日中低下が生じていることが明らかとなった。ミズナラについては、蒸散量と吸水量の日ピーク時刻にはほぼ差がなかったのに対し、週から月のオーダーで蒸散量と吸水量の関係が変化していた。夏季から秋季にかけてのミズナラにおける蒸散量と吸水量の関係は、8月中旬〜下旬、8月下旬〜9月中旬、9月中旬〜10月下旬の3期間で明瞭に異なっていた。この関係を考察するために、可能蒸発量との比較を行ったところ、大気側の蒸発要求に対する蒸散量と吸水量の応答がそれぞれの期間で異なっていることが明らかとなった。今後、樹体そのものが蒸散に果たす役割を含めてこの原因を解明する必要があるものと考えられた。
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Research Products
(5 results)
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[Publications] Kobayashi, Y., Tanaka, T.: "Water flow and hydraulic characteristics of Japanese red pine and oak trees"Hydrological Processes. 15. 1731-1750 (2001)
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[Publications] 小林義和, 田中 正: "TDR法による樹幹貯留水分の測定"水文・水資源学会誌. 14(3). 207-216 (2001)
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[Publications] 飯田真一, 田中 正: "樹液流速測定に基づく蒸散と吸水の関係"水文・水資源学会2001年研究発表要旨集. 246-247 (2001)
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[Publications] 飯田真一, 田中 正: "筑波大学川上演習林、天然ミズナラ林の樹液流速測定に基づく蒸散特性"第112回日本林学会学術講演集. No.112. 547 (2001)
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[Publications] 飯田真一, 濱田洋平, 田中 正: "筑波大学陸域環境研究センターに隣接するアカマツ林の胸高直径と立木密度の変化について"筑波大学陸域環境研究センター報告. No.2(印刷中). (2002)