2000 Fiscal Year Annual Research Report
清掃工場周辺の酪農地域における有害元素降下物の同定とそのリスク評価
Project/Area Number |
12680560
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
颯田 尚哉 岩手大学, 農学部, 助教授 (20196207)
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Keywords | 清掃工場 / 酪農地域 / 降下物 / 有害元素 / 大気 / 土壌 / アンチモン |
Research Abstract |
ダイオキシン類を筆頭に清掃工場(焼却炉)から放出される有害物質による環境汚染が危惧されている。特に清掃工場周辺に農地が存在する場合には、農産物への影響が懸念されながらも調査自体がやっと始められたところである。調査項目はダイオキシン類にほぼ限定され、対象は葉菜が中心という現状から、本研究ではダイオキシン類以外の有害元素に注目し、清掃工場から大気中に放出され降下物として周辺土壌環境を汚染する経路を対象に調査した。岩手県は非常に酪農が盛んであり、盛岡市北西部のT村には酪農地域の中に村営の清掃工場(処理能力30t/日:年間焼却量約1万t)があり、本研究の調査地点として最適な条件にある。今年度は清掃工場周辺において、大気中の汚染元素と土壌中の汚染元素を中性子放射化分析法で測定し、大気環境中に放出され、ケミカルフォールアウトとして降下沈着して表層土壌を汚染している元素を同定するとともに高濃度汚染地区を評価することを目的とした。 水平方向の元素分布において、清掃工場近傍から水平距離でおよそ1.5kmまでは、急激に土壌中濃度が減少する傾向がアンチモン(Sb)にみられた。水平方向で最も高濃度のSbを示した地点においては、地表面から深さ方向にSb濃度が減少してゆく分布を示している。地表面の2mg/kgを超える濃度から、深さ約5cmまでは直線的に1.5mg/kgまで減少し、その後深さ約12cmまでは、濃度1.5mg/kgでほぼ一定であり、その下層約13cmより深いところで急激に濃度が減少し、1mg/kgより小さい値を示している。この地域のSbのバックグランド値は、文献や対照地点の検討から高々1mg/kgである。このことから、この地点では、Sbが土壌表面へ蓄積していることを明確に示している。また、同じ地点の大気から6.7×10^<-3>μg/m^3のSbが検出され、対照地点ではSbは検出されなかった。以上の調査結果より、清掃工場が周辺の牧草地を含む表面土壌をSbで汚染していると考えられた。
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