2000 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12680563
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
尾張 真則 東京大学, 環境安全研究センター, 教授 (70160950)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
坂本 哲夫 東京大学, 環境安全研究センター, 助教授 (20313067)
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Keywords | 実験廃棄物 / マイクロラボラトリ / 微小規模化学実験 / 学生実験 / 有機合成 |
Research Abstract |
本研究は、現在増え続けている実験廃棄物の削減を目指して、実験に使用する化学物質を少なくする一方で、実験の価値を損なわない実験手法の開発を念頭におき、液体を取り扱う化学実験の規模を微小化した汎用実験装置を試作することを目的としている。 本年度は、大学における専門教育で広く採用されている学生実験のうち、有機合成実験の基本操作を多く含むものを題材として、規模縮小に伴う問題点の明確化を行った。トルエンのFriedel-Craftsアシル化反応は、塩化アルミニウムとトルエンの混合物に対し、無水酢酸の滴下、還流によるアシル化、液-液抽出、洗浄、乾燥、ろ過、溶媒追出し、蒸留という一連の操作を行い、p-メチルアセトフェノンを得るものである。器具としては、三ツ口フラスコ、ビーカー、分液ロート、三角フラスコ、ナス型フラスコを用いる。この合成操作を、通常の実験規模(出発トルエン量60.6g)、1/3規模、1/6規模の3通りで行い、収率、実験廃棄物排出量を測定した。収率は通常規模に対する79%から、規模を縮小するにしたがい57%、51%に減少した。この原因として、反応率の低下、器具内面への付着率の増加、抽出率の低下、ろ紙による吸収率の増加、蒸留残渣率の増加などが考えられた。これらのうち、器具内面への付着率は通常規模での1.2%から、規模縮小に伴い4.3%、6.4%に増加しているが、これは、器具を小型化するほど容積に対する表面積が増加することによる。蒸留残渣率は、蒸留終点においてある程度の液量を残さなければ危険性が増すため、規模に比例して減らすことは困難である。一方、実験廃棄物量は、ほぼ正確に実験規模に比例して減少した。また、操作性は通常規模の1/6程度までの縮小では特に問題となる低下は見られなかった。これらの検討から、通常規模の1/10程度までの縮小では、収率の若干の低下を伴うものの、従来用いられている実験器具と同じ形で小型化したものを用いて汎用性を失わずに実現できることが明らかとなった。
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