Research Abstract |
平成14年7〜8月にヴェトナム北部(Thai Binh & Nam Dinh)及び南部(Can Dau, Camau)マングローブ域に広がるエビ養殖場から海水と底泥を採取した.海水及び底泥資料からは使用量の多い4種の抗生物質(trimethoprim(TMP), sulfamethoxazole(SMX), norfoxacin(NFXC), oxolinic acid(OXLA))を抽出・定量した.また,海水中のDO, BOD_5,H_2S,全菌数,栄養塩濃度(NH_3,NO_2,NO_3-N, SRP, DTP)濃度を分析した.以下の結果が得られた. (1)DOは底層で2.5〜2.9mg/l,表層で6.1〜6.5mg/lで,池の内外での差は小さい.底層はかなり貧酸素化している. (2)BOD_5は,池内部で0.9〜9.8mgO_2/l,池外水路で4.1〜8.8mgO_2/lであった. (3)H_2Sは,0.03〜0.22mg/lで,底層では許容濃度0.03mg/lを大きく上回っていた. (4)全菌数は,1.1x10^5〜32.5x10^5 cell/mlで、5月〜9月の養殖期に増大し,毎年耐性菌による養殖エビの斃死が生じている. (5)栄養塩濃度は,アンモニアで0.007〜0.25mg/l,亜硝酸で0.003〜0.25mg/l,リン酸で0.1〜0.5mg/l,全窒素で,0.72〜1.78mg/lであった.特に池内部の底層ではきわめて高濃度で,富栄養化の進行が著しい. (6)抗生物質は,TMPは表層で0.3〜1.1ppm,底層で0.3〜2.1ppm, SMXは最大1.8〜5.6ppm, NFXCは最大1〜4ppm, OXLAは0.5〜1.8ppm,底泥中のTMPは湿泥1g当たり0.02〜0.13mg, SMXで0.01〜0.08mg, NFXCで0.1〜2.6mg, OXLAで最大0.1mg程度であった.海水中の濃度及び底泥中の残留量ともきわめて高濃度であった. (7)浦ノ内湾堆積物から各種抗生物質に耐性を有する菌を探索した。 東南アジアのエビ養殖池では大量の抗生物質が使用されているが,一旦病気が発生すれば広い範囲に蔓延する.これらの原因として,富栄養化,貧酸素化による水質悪化,大量の抗生物質投与による耐性菌の出現などが挙げられる.
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