2001 Fiscal Year Annual Research Report
気候条件がミズゴケ・ハンモックの形態,水文条件や植物群落に与える影響の解析
Project/Area Number |
12680584
|
Research Institution | Sapporo School of the Arts |
Principal Investigator |
矢部 和夫 札幌市立高等専門学校, インダストリアルデザイン学科, 助教授 (80290683)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
平野 高司 北海道大学, 大学院・農学研究科, 助教授 (20208838)
倉持 寛太 北海道大学, 大学院・農学研究科, 助手 (00225252)
浦野 慎一 北海道大学, 大学院・農学研究科, 教授 (40096780)
|
Keywords | 降水涵養 / 蒸発散量 / チャミズゴケ / ハンモック / ホロウ / 水収支法 / 毛管水 |
Research Abstract |
風蓮川湿原でチャミズゴケ(Sphagnum fuscum)hummockの水文気象環境と栄養環境の指標であるECを測定した.また,約1ヶ月間隔でhummock上に生育するチャミズゴケの伸長量を測定した.得られたデータからhummock不飽和層の水収支とチャミズゴケの成長量を計算した. 水収支解析の結果,晴天日の日中に蒸発散によって失われたのと同量の水がhummock深層から表層に補給され,地下水面から深層への水移動量は蒸発散量より小さくなることがわかった.一方,降雨時は,hummock表層では供給された雨水の大部分がすぐに浸透し,一部が深層に貯留されることもわかった.以上のような機構で,hummock表層の含水率があまり変動しないことがわかった. チャミズゴケの成長は蒸発散量が降水量を上回った2001年5-6月においてもあまり抑制されなかった.このことからチャミズゴケは晴天が続いてもhummock深層や地下水面から供給される水によって枯死せず成長したことが推察された. ECはhummock深層で最も低かった.hummock深層では以下のようにして貧栄養環境になると推察される:(1)降雨時,hummockには雨水が,hollowには雨水と湿原縁の段丘からの比較的富栄養な水が供給される.(2)その後晴天が続くと,地下水面からhummock深層への水移動量が蒸発散量より小さいため,水位がhummockでhollowより高くなる.(3)hummock深層に富栄養水が流入しにくくなり貧栄養環境が保たれる.hummockが貧栄養環境になるため,競争力が強く生育に多量の栄養を必要とする低層湿原植生が侵入しにくいと推察された. hummockはミズゴケの枯死体が堆積してできたものであることを考えると,ミズゴケはハンモックを作ることでそれ自身の生育育に適した環境を作り出していたことが示唆された.
|
-
[Publications] 河内邦夫, 高橋宣之, 矢部和夫, 浦野慎一: "携帯型電導度計とGPSを利用した湿原環境調査"応用地質. 41(6). 371-382 (2001)
-
[Publications] 矢部和夫, 中村隆俊, 河内邦夫: "冷温帯歌才湿原におけるイボミズゴケの生育する水文化学環境"ランドスケープ研究. 64(5). 549-552 (2001)
-
[Publications] Yabe K., Uemura S.: "Variation in size and shape of Sphagnum hummocks in relation to climatic conditions in Hokkaido Island, northern Japan"Canadian Journal of Botany. 79. 1318-1326 (2001)
-
[Publications] Nakamura T., Uemura S., Yabe K.: "Variation in nitrogen use traits within and between five Carex species growing in the lowland mires of northern Japan"Functional Ecology. 16. 67-73 (2002)
-
[Publications] Yabe K., Nakamura T.: "Base mineral inflow in a remnant cool-temperate mire ecosystem"Ecological Reseach. 17(4)(in press). (2002)
-
[Publications] Nakamura T., Yabe K., Komatsu T., Uemura S.: "Reduced soil contributes to the anomalous occupation of dwarf community in N-richer habitats in a cool-temperate mire"Ecological Research. 17(1)(in press). (2002)
-
[Publications] 矢部和夫(水野一晴編): "なぜ冷温帯の氾濫原湿原と谷湿原では湿生草原やハンノキ林の景観が異なるのか? 「-植生環境学-植物の生育環境の謎を解く」(水野一晴編)"古今書院. 223 (2001)