Research Abstract |
1)ヒトβ-1,4-ガラクトース転移酵素(β-1,4-GalTs I-VI)の基質特異性の解析(佐藤担当):ヒトβ-1,4-GalTs I,II,III,IV,V,VIのcDNAをSf-9細胞で発現させ、これを酵素源として各酵素の基質特異性を解析した。その結果、β-1,4-GalTs I,II,IIIは2,4-分岐オリゴ糖にガラクトースを転移できるが、β-1,4-GalTs IV,V,VIは効率よくガラクトースを転移できなかった。これに対して全てのβ-1,4-GalTは2,6-分岐オリゴ糖にガラクトースを転移できたが、β-1,4-GalT Iは専ら2-分岐のGlcNAcに、β-1,4-GalTs II,IIIは2-分岐と6-分岐のGlc-NAcに同程度に、そしてβ-1,4-GalTs IV,V,VIは専ら6-分岐のGlcNAcにガラクトースを転移する性質を有することが判明した。 2)β-1,4-GalTs遺伝子の癌細胞への導入(古川担当): 細胞が癌化するとβ-1,4-GalT IIの遺伝子発現が減少し、β-1,4-GalT Vの遺伝子発現は増大することを明らかにした[Shirane et al.(1999)Biochem.Biophys.Res.Commun.265,434-438]。我々はこれが癌に共通した現象であるかどうかを確かめるため、種々のヒト癌細胞においてβ-1,4-GalTの遺伝子発現を解析し、その一般性を確立した[Sato et al.(2000)Biochem.Biophys.Res.Commun.276,1019-1023]。そこでB16-F10マウスメラノーマ細胞にβ-1,4-GalT IIセンスcDNAあるいはβ-1,4-GalT VアンチセンスcDNAを導入し、癌細胞をマウス皮下に移植したところ、腫瘍形成が著しく抑制された。それぞれの腫瘍塊から調製した細胞膜タンパク質で糖鎖のガラクトシル化に変化が見られ、これが腫瘍形成の抑制と関係していると考えられた。
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