2001 Fiscal Year Annual Research Report
D-セリン取り込み部位の機能解析と発現クローニング
Project/Area Number |
12680761
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
橋本 篤司 東海大学, 医学部, 講師 (80271592)
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Keywords | D-アミノ酸 / D-セリン / トランスポーター |
Research Abstract |
これまで哺乳類における遊離型アミノ酸は、すべてL-体から構成されていると考えられてきた。しかし最近、哺乳類の脳内に遊離型D-セリンやその生合成酵素であるセリンラセマーゼが存在することが明らかになった。本研究では、これまでにD-セリンの腹腔内投与(6時間後)によって、胸腺>肺>脾臓>腎臓>肝臓>心臓>精巣>大脳皮質の順に多く取り込まれることを明らかにした。これまで腎臓などの臓器に取り込まれて排泄されると考えられてきたD-セリンが胸腺・肺・脾臓などの臓器にも高濃度に取り込まれることを明らかにした。そこでさらに詳細にD-セリン取り込み部位の解析を行うため、D-セリン取り込みの脳内分布及び時間依存性について検討した。7週令のラットにD-セリン(10mmol/kg)を腹腔内投与し、3時間、6時間、1日、3日及び7日後断頭して中枢及び末梢組織のD-,L-セリン含量を測定した。D-セリン投与6時間後、中枢組織に取り込まれたD-セリン含量は大脳皮質>海馬=線条体=間脳>中脳>橋-延髄=小脳の順で多かった。これら脳部位のD-セリン含量は投与6時間後ピークに達し、その後徐々に減少した。L-セリン含量は大脳皮質、海馬、線条体において投与6時間後、間脳、中脳、橋-延髄、小脳において投与1日後ピークに達し、その後徐々に減少した。これらの中枢組織における結果は、D-セリン含量の増加によってセリンラセマーゼの逆反応が起こり、L-セリン含量が増加した可能性を示唆している。一方、末梢組織に取り込まれたD-セリン含量は、肝臓、腎臓、脾臓、胸腺、副腎、心臓において投与3時間後、精巣、肺において投与6時間後ピークに達し、その後急激に減少した。L-セリン含量は肺において投与6時間後一過性に増加したが、肺以外の全ての末梢組織においては徐々に減少する傾向が見られた。末梢組織にはセリンラセマーゼがほとんど存在しないことから、D-セリン含量が増加してもD-セリンからL-セリンの反応が起きないためと思われる。さらに、発現クローニングに使用する大脳皮質及び腎臓のcDNAライブラリーを作成した。このcDNAライブラリーをCOS細胞にトランスフェクションし、[3H]D-セリンの取り込み活性によってトランスポーターのスクリーニングを開始する予定である。
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