Research Abstract |
成熟したニホンザルを用いて,人工現実感(バーチャル・リアリティ;VR)で仮想空間内をジョイステックを操作して,最終目標の部屋までの道順を覚える学習課題を行った。人工現実感は2階建ての建物内で,1階に8部屋,2階に7部屋の合計15部屋があり,それぞれの室内にはテーブル,椅子,キャビネット,本棚,コンピュータ,動物用ケージなどを備え,各部屋に特徴を持たせた。また,上下階の移動はエレベーターで行えるように設定した。 本年度は,1階の4部屋と2階の1部屋の含わせて5部屋の建物内での配置を覚え,最終目標の部屋に到達すると,報酬としてジュースがもらえる課題を学習させた。訓練の第1段階は,パイロットの動きに合わせて,サルがジョイステックを操作し,その後を追従する課題(視覚誘導課題)を学習させた。第2段階は,サルはジョイステックを操作しない状態で,まずスタート地点から最終目標の部屋までの道順を自動的に移動して,その道順を記憶させた後,実際にサルにジョイステックを操作させて,先程記憶した部屋に行く課題(視覚記憶課題)を学習させた。現在は,第3段階として,目標の部屋の内部の場面を呈示し,サルがその呈示された部屋の場所を記憶し,パイロット(視覚誘導)なしでジョイスティックを操作して,目標の部屋に行く課題(記憶誘導課題)を学習させ,現在ではほぼ完全にこの課題を遂行できるようになった。以上のように,本年度はサルでの認知地図の学習過程の行動学的な検索を行った。 次年度は,この道順課題を学習したサルを用いて,空間内の環境を基にした脳内表現に関連した海馬と,道順の経路上にある障害物の相対的な位置の情報処理に関係した頭頂連合野からニューロン活動を記録し,道順課題遂行中のニューロン活動の性質について解析を行いたい。
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