2001 Fiscal Year Annual Research Report
酵素活性の可視化による細胞内情報伝達系の機能の解明
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12680803
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Research Institution | Okazaki National Research Institutes |
Principal Investigator |
坪川 宏 岡崎国立共同研究機構, 生理学研究所, 助教授 (30227467)
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Keywords | PKC / 細胞内情報伝達系 / イメージング / 海馬 / カルシウムイオン / 興奮性調節 / 神経生理学 / 脳科学 |
Research Abstract |
マウス海馬スライス標本およびスライス培養標本上のニューロンを用いて、以下の実験を行った。 (1)タンパク質リン酸化酵素C(PKC)の薬理学的活性化によるトランスロケーションの可視化 PKCに結合する蛍光色素fim-1を記録電極の内液に加えることにより単一錐体細胞内に充填し、PKCの活性化剤であるphorbol 12-myristate 13-acetate(100nM)を細胞外に投与して、蛍光色素の動きを観察すると同時に電気生理学的記録を行った。その結果、薬物の投与後15分ほどで細胞体の膜付近にfim-1蛍光の集積がみられ、PKCが膜分画ヘトランスロケーションしたことが検出された。この間、徐々にシナプス電流の応答特性が変化し、15分後にはPKC活性化の結果と考えられる薬理効果が確認された。 (2)PKCのトランスロケーションと細胞内カルシウム濃度変化の同時検出 上記と同様の方法でCa^<2+>感受性蛍光色素であるfura-2をfim-1と共に細胞内に充填し、両色素を異なった波長の光で逐次励起して蛍光を観察することにより、PKCの移動とCa^<2+>濃度変化との同時検出を試みた。薬物投与によるPKCのトランスロケーションは、細胞内カルシウム濃度に変化がなくとも誘発されたが、Ca^<2+>濃度が大きく上昇すると、より速やかに起こる傾向が見られた。トランスロケーションは、Ca^<2+>濃度の上昇とほぼ同時かやや遅れて始まり、Ca^<2+>濃度が元のレベルに戻った後も持続した。これらの結果から、細胞内Ca^<2+>濃度上昇はPKC活性化のためのスイッチとして働いていることが分かった。 (3)シナプス入力によって誘発されるPKCトランスロケーションの検出 海馬CA1野の錐体細胞では、シナプス伝達の長期増強の発現にPKCの活性化が必須と言われている。そこで、長期増強の誘発に用いられるような電気刺激を加えてPKCのトランスロケーションが検出されるかどうか試みた。入力線維に高頻度刺激を加えることにより、記録している錐体細胞のほぼ全ての領域で大きなCa^<2+>濃度増加が見られ、電気生理学的記録の上ではシナプス応答の長期増強が誘発された。しかしながら、少なくとも細胞体領域ではトランスロケーションが確認できず、トランスロケーションを引き起こすには、高頻度刺激を5-6回繰り返す必要があった。シナプス入力によるPKCの活性化は、主に樹状突起領域で起こっていることが示唆された。
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