2000 Fiscal Year Annual Research Report
H.R.ギーガーを中心とする「サブカルチャー」の定義をめぐる日米比較研究
Project/Area Number |
12710020
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
當間 千代子 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 助手 (80313170)
|
Keywords | H.R.ギーガー / サブカルチャー / カウンター・カルチャー |
Research Abstract |
H.R.ギーガーをキーワードとする「サブカルチャー」の定義をめぐる本研究の今年度における調査研究の結果明らかになった点は以下のとおりである。まず比較研究という観点からは、ユダヤ・キリスト教主義における「神」の存在/不在が「サブカルチャー」なる概念に大きく関与しているということである。一例として、ギーガーが室内装飾を手掛けたギーガー・バーがある。現在はギーガーのデザイン・コンセプトならびに価値観に忠実に設計されたものが、ギーガーの生地であるスイスのChur市に1件あるのみである(1992年にオープン)。一方これに先立つ1987年に東京都内に1件のギーガー・バーが作られたが、これはギーガーの意に反する商業上義的・ファッション的なもので既に廃業している。この2件の建造物の辿った軌跡の違いには「サブカルチャー」なる概念の違いが反映されているように思われる。前者において「サブカルチャー」はゴシック文化、シュールレアリズム、ファンタジー、バイオメカノイド、ロックンロール、サイエンス・フィクション、エロス、グロデスク(醜悪さ)、死といった西洋文化がその長い歴史のなかで培ってきた反キリスト教的要素を緻密に積み上げたカウンター・カルチャーであるのに対し、後者においては「対抗」という要素が欠けているようである。このほかギーガーの活動範囲は、映画・舞台芸術、アルバム・カバーのデザイン、絵画、彫刻、家具デザイン、テーマ・パーク建設、ギーガー美術館と多岐に渡り、大文字の文化(Culture)・芸術(Art)とも密接に関わる存在であることから、欧米文化における「カルチャー」と「サブカルチャー」の複雑な関係について、比較文化研究という観点から引き続き調査を続けている。
|