2000 Fiscal Year Annual Research Report
社会適応予測のための学習効果メカニズム分析と自立生活プログラムの開発に関する研究
Project/Area Number |
12710066
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
稲富 宏之 長崎大学, 医療技術短期大学部, 助手 (10295107)
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Keywords | 精神分裂病 / 学習 / 反応時間 / バウムテスト / 社会適応度 |
Research Abstract |
本研究は、ICD-10によって診断された精神分裂病患者15名(男11名、女4名)を対象に1)ボードトレーナーの反応時間を指標にした学習の習得タイプの類型化、2)学習の習得タイプに関与するバウムテスト特徴と社会適応度の分析を行った。対象者は、平均年齢52.4±4.7歳、平均罹病期間24.9±8.5年、平均入院期間11.1±8.9年、教育歴10.3±1.9年であった。 その結果、学習習得タイプの類型は「学習効果あり(10名)」と「学習効果なし(5名)」の2タイプに分類できた。 まず、「学習効果あり」タイプのバウムテスト特徴は、1)樹木らしく表現された描画が多く、2)言語能力や抽象的思考能力が年齢相応の水準に達していたのは7名であり、3)幹の先端が開いた形式は5名に認められ、4)枝や葉は比較的多く描けていた。そして社会適応度は、「対人関係」の項目は概ね良好と考えられ、「日常生活」、「労働または課題の遂行」、「自己認識」では問題なしから強い援助や助言が必要という幅のある所見であった。 一方、「学習効果なし」タイプのバウムテスト特徴は、1)樹木らしい表現と樹木とは印象が異なる表現の2つに分かれ、2)言語能力や抽象的思考能力は年齢相応の水準にほぼ達していたが、3)幹の先端が開いた形式は1名だけに認めたものの、4)枝・葉・果実の表現内容は量も質も乏しかった。そして社会適応度は、「日常生活」は問題なしと強い援助や助言が必要という所見に分かれ、「労働または課題の遂行」では助言や援助が必要という所見であり、「対人関係」と「自己認識」では問題なしから強い援助や助言が必要という幅のある所見であった。 今回の結果から学習習得タイプの類型化はできたが、学習の習得タイプに関与するバウムテスト特徴と社会適応度について探求するためにはより多くの対象者数のもとで詳細な分析が必要であることが示唆された。
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