2001 Fiscal Year Annual Research Report
社会適応予測のための学習効果メカニズム分析と自立生活プログラムの開発に関する研究
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12710066
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
稲富 宏之 長崎大学, 医学部・保健学科, 助手 (10295107)
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Keywords | 精神分裂病 / 学習 / 系列反応時間課題 / バウムテスト / 社会適応度 |
Research Abstract |
前年度の研究計画を追跡評価し、「学習習得タイプの類型化」と「バウムテスト特徴でみられる自我障害・認知障害」及び「外的要因の関与の分析」の各項目間の相関性を分析し、自立生活を促進するプログラムを検討した。 対象者は、ICD-10の診断による精神分裂病患者群26名と健常者群44名の計70名であった。精神分裂病患者は、平均年齢49.9±5.3歳、平均罹病期間23.3±10.2年、平均入院期間8.9±7.4年であった。健常者は、平均年齢47.6±5.4歳であった。 学習習得タイプを類型するための反応時間課題において、健常者群は言語報告できない知識によって反応時間が短縮していたが、患者群は反応時間の短縮が生じなかった。そして、クラスター分析によって患者群3クラスターと健常者群5クラスターに分類することができたので、両群のクラスターを比較すると「パフォーマンスの向上」が類似しており、「パフォーマンスの不安定」は患者群に特徴的であると考えられた。患者群のクラスターとバウムテスト特徴には関連を認めなかったが、外的要因としての社会適応度の低下とパフォーマンスの不安定の関連が示唆された。また、パフォーマンスの向上は社会適応度の障害度とは関連していなかった。 患者群全体で反応時間が短縮するような学習効果を認めなかったのは社会適応度が影響していたためであると考えられた。反応時間課題を達成するためには反応、探索、注意の維持、刺激系列の記銘・想起・照合などの要素的な運動技能を統合して遂行できることが要求される。つまり、パフォーマンスの不安定な患者に対しては要素的な運動技能を含んだプログラム構成、パフォーマンスの向上を示した患者には、要素的な運動技能を生活適応のために般化できていない可能性が示唆されるので、単純から複雑な課題の段階付けによって応用力を高めるプログラム構成が必要であると考えられた。
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