2000 Fiscal Year Annual Research Report
EU統合下の社会政策-社会的ヨーロッパを求める失業者の運動の展開
Project/Area Number |
12710091
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
稲葉 奈々子 茨城大学, 人文学部, 講師 (40302335)
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Keywords | EU / 失業 / 社会運動 / 貧困 / 社会的排除 / フランス |
Research Abstract |
本研究では、以下の順で実態調査及び理論研究を行った。それぞれの研究概要と研究実績は以下の通りである。 (1)1990年代フランスにおける移民労働者が、社会権を行使するために機能させている互助組織について調査し、この組織が、フランスの共和国主義と相容れないエスニシティを基盤にした組織であるにもかかわらず、事実上は機能不全に陥った共和国主義を支える役割を果たしている現状を分析し、論文を執筆した。 (2)EUサミットへの異議申し立てを目的として、失業者や移民労働者などによる「社会的ヨーロッパを求める失業者のヨーロッパ行進」を1996年以来実施している社会運動の社会調査を行った。それによって1990年代初期のフランスにおける失業者団体の組織化から、国境を越えて運動が拡大する過程を論文に執筆した。 (3)EU統合にともない域内出身外国人の権利が拡大する一方で、域外出身外国人との権利の不平等が拡大している事実を調査した。社会保障への権利を中心にして実態を分析した論文を執筆した。 (4)1970年以降のEUの移民政策の変遷について調査した。欧州委員会がロビイングや諮問機関を介して外部に開かれた組織機構をもつことから、域外出身移民が居住する国民国家に対してよりも効果的にEUに対して政治的意思を表明する回路をもつ仕組みを分析し、論文を執筆した。 (5)フランスにおける移民のアソシエーション活動の調査結果から得られた知見をもとに、日本における移民労働者のエンパワーメントについて調査した。日本の場合、移民当事者よりも支援組織によるエンパワーメントの基盤が提供されている現状を分析し、論文を執筆した。
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[Publications] 稲葉奈々子: "移民・外国人と社会保障:日欧の住宅政策"立教大学国際シンポジウムプロシーディングス『日欧移民政策における差異と収斂』. 68-74 (2000)
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[Publications] 稲葉奈々子: "フランスにおける移民と社会権行使:統合を媒介する制度の変化"茨城大学人文学部紀要コミュニケーション学科論集. 8号. 67-83 (2000)
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[Publications] 小ヶ谷千穂,小笠原公子,丹野清人,稲葉奈々子,樋口直人: "移住労働者のエンパワーメントにむけて:支援組織の取り組みを中心に"茨城大学地域総合研究所年報. 34号(近刊). (2001)
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[Publications] 稲葉奈々子: "脱共和国主義化するシティズンシップ:フランスにおけるシティズンシップの変遷"加藤普章・NIRA編『市民権と移民政策』日本経済評論社. (近刊). (2001)
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[Publications] 稲葉奈々子: "新しい貧困層と社会運動"宮島喬・梶田孝道編『構造変動とマイノリティ』東京大学出版会. (近刊). (2001)
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[Publications] 稲葉奈々子: "EUと移民政策:「社会的ヨーロッパ」構築の過程と移民"宮島喬・羽場久美子編『ヨーロッパ統合的行方』人文書院. (近刊). (2001)