2001 Fiscal Year Annual Research Report
EU統合下の社会政策―社会的ヨーロッパを求める失業者の運動の展開
Project/Area Number |
12710091
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
稲葉 奈々子 茨城大学, 人文学部, 助教授 (40302335)
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Keywords | EU / 失業 / 社会運動 / 貧困 / 社会的排除 / フランス |
Research Abstract |
本研究では、以下の順で実態調査及び理論研究を行った。それぞれの研究概要と研究実績は以下の通りである。 (1)90年代のフランスの都市底辺層を担い手とする社会運動の発端となった「住宅への権利運動」が編み出した住宅占拠という運動の戦略が広く市民も動員することができた理由を、公共空間として占拠空間を位置づける論考を行った。 (2)「住宅への権利運動」が伝播し、「雇用占拠」など同様に占拠を戦略とする運動が広がったが、なかでもパリを中心として「社会的ヨーロッパを求める失業者の社会運動」に対する社会調査により、内に閉じこもりがちな失業者たちが法律をかえるまでに影響力をもちえる運動が形成される過程について論文を執筆した。 (3)社会的排除をめぐる運動が、非正規滞在移民の滞在許可証を求める運動と連携しながらも、非正規移民の独自の運動が発展した背景を、運動の担い手となった移民への聞き取り調査により考察し、論文を執筆した。 (4)今後、都市底辺層を担い手とする運動を比較社会学的に考察するための作業として、北米、日本それぞれにおいて、ホームレスや移住労働者の運動の展開について社会調査を行い、論文を執筆した。
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[Publications] 稲葉奈々子: "公共空間を占拠する失業者たち:90年代フランスにおける社会運動と社会的排除"情況. 12月号. 91-107 (2001)
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[Publications] 稲葉奈々子: "サンパピエと市民権"三浦信孝編『フランスからの問い』藤原書店. 49-71 (2001)
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[Publications] 小ケ谷千穂, 小笠原公子, 丹野清人, 稲葉奈々子, 樋口直人: "NGOs and Empowerment of Migrant Workers in Japan"茨城大学人文学部紀要・コミュニケーション学科論集. 第10号. 87-129 (2001)
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[Publications] 稲葉奈々子: "フランスにおけるアムネスティの変遷:対象カテゴリーからの検討"法務省入国管理局委託研究報告書『国際移動の新動向と外国人政策の課題:各国における現状と取り組み』. 59-84 (2001)
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[Publications] 稲葉奈々子: "フランスにおけるホームレス対策と住宅への権利運動"都市住宅学. 34号. 25-30 (2001)
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[Publications] 稲葉奈々子: "越境する社会運動:ケベックにおける都市底辺層の社会運動"寄せ場. 14号. 64-78 (2001)