2000 Fiscal Year Annual Research Report
移住者によるエスニック・コミュニティの再形成過程とその社会的機能
Project/Area Number |
12710098
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
魯 富子 名古屋大学, 文学研究科, 助手 (30303572)
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Keywords | 在日コリアン / 同姓結合 / 同姓組織 / エスニック・コミュニティ / 社会的ネットワーク |
Research Abstract |
本研究は、在日コリアンの同姓組織を分析対象として、在日コリアンのエスニック・コミュニティの形成過程とその社会的機能を考察するものである。具体的には、全州李氏の同姓組織(日本国支院、関西分院、桂城君派宗親会)を事例として取り上げ、同姓組織の役員と会員への聞き取り調査を韓国と日本で数回実施した。その結果、在日コリアンは以下の3つの同姓組織を形成していることがわかった。 1)桂城君派宗親会は、韓国本国との人的交流や同姓同士の口コミを通じて生成された同姓組織である。桂城君派宗親会は顔の見える同姓関係を築き、かつ家族単位の親睦旅行などインフォーマルな生活場面での親睦機能を有する。2)関西分院は、とくに在日コリアンの集住という地域特性を反映して、一方では、インフォーマルな生活場面における親密な人間関係を形成し、他方では、フォーマルな生活場面における仕事上の有益なネットワークにもなっている。以上の2つの同姓組織は、在日1世の男性を中心とする小グループであると捉えられる。3)日本国支院はエスニック・メディアや民団を通じて形成された任意組織であり、その特徴は同姓集団全体を包括する人脈のネットワーク化にほかならない。例えば、韓国から同姓の国会議長が来日した際に、東京だけで約200名の全州李氏が集まったという。日本国支院への同姓の参加は、政治家や企業の経営者など社会的・経済的成功者の存在に左右される。一定の富を蓄積した在日コリアンは、自分に社会的威信を付与するために、同姓組織を通じて社会的・経済的成功者との縁故関係を求めているといえる。 このように、在日コリアンは同姓組織を通じて多様な社会的ネットワークを形成しつつある。現在、同姓に基づく社会的ネットワークは、在日コリアンにとって一定の資源を得る有効なネットワークであり、かつ在日コリアンのエスニック・コミュニティの一端を示唆するものと言える。
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