2000 Fiscal Year Annual Research Report
19世紀後半以降の日本・北米・英国における優生思想と結婚・家族・性観念との関係
Project/Area Number |
12710112
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Research Institution | Meiji Gakuin University |
Principal Investigator |
加藤 秀一 明治学院大学, 社会学部, 助教授 (00247149)
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Keywords | 優生学 / 結婚 / 家族 / 恋愛 / 近代 |
Research Abstract |
今年度は、二年間の研究助成期間の初年度にあたるため、主として資料収集とその整理に務めた。夏期には、英ロンドンのThe Wellcome Trust Library for History of MedicineおよびThe Galton Instituteを訪問し、ほぼ二週間にわたって、貴重な優生学史関連文献(主にイギリスに関するもの)を閲覧し、また一部は複写・購入することができた。日本・北米に関連する文献についても従来からの収集を継続し、蓄積を増やすことができた。 これらの文献・資料の内容に関わる踏み込んだ検討は次年度以降の課題となるが、ここまでの研究によって明瞭になってきたのは以下の点である。第一に、優生学は、結婚や恋愛にかんする新しい観念と密接に結びつくことによって人口に膾炙した。たしかに昭和期に入って、国家主義的な優生政策が実施されたが、その直接の影響よりも、「恋愛結婚に基づく一夫一婦制の近代家族」という観念と実践の深奥に組み込まれた優生学的観念の長期にわたる影響の方がより重大である。このことは程度や形態の差はあっても、英米についてもある程度当てはまるように思われる。この観点からの比較研究が今後の課題である。第二に、近代日本においては、旧来の「家系」や「祖先」といった観念とは異なる質をもった、唯物論的な「血統」という新たな観念が、啓蒙思想家たちによって導入された。それと結びついた優生学は、あくまでも近代的なものであり、その意味で「国家主義」的なものである。その由来、そしてそれがどのように「日本化」されたのかについては、なお継続的な調査を要する。
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