2000 Fiscal Year Annual Research Report
水子供養と民俗宗教の関わりについての社会学的研究-死者の葬送方法と民俗宗教の関連
Project/Area Number |
12710125
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Research Institution | Osaka Women's Junior College |
Principal Investigator |
星野 智子 大阪女子短期大学, 生活科学科, 講師 (60300266)
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Keywords | 水子供養 / 女性の癒し / 死者儀礼 |
Research Abstract |
本年度は、東大阪市周辺の調査に力を注いだ。この辺りは山の霊性が強く感じられるとして、石切神社をはじめとして多くの宗教団体がある。これまで、近接している奈良県の仏教系の宗教団体を対象に水子供養調査を行ってきたので、本年度は主に神道系の宗教団体を調査している。しかしながら、死者の追悼儀式そのものに重きを置かない、亡くなった胎児そのものがその対象として問題があるなどの理由から、水子供養は当事者以外には非公開であるところが多い。報告者は対象を探し、インタビューと参与観察を申し込む作業をし、いくつかの団体を調査した。これらの調査に用いた視覚機器による資料、パンフレット、聞き書きしたデータを整理した。 前述したように、神道が死者儀礼に対して熱心ではないのは、死をケガレと考えるからである。しかしながら、A神社では水子供養が行われており、その供養の参与観察は特筆すべきものである。参加者は、20代前半のカップルから70代前半の女性まで多様であった。前半は神道式で、参加者各々のケガレを祓ったり、祝詞が読まれたりする。後半は、般若心経を皆で読響し、お焼香をしていく。神官へのインタビューによれば、「亡くなった胎児の霊を慰め、その親にあたる人の罪・ケガレを祓うことが目的である」という。これは、日本の民俗宗教の根底にある「死者の霊をきちんと供養しなければならない」という考えに基づくものであろう。集っている人の中には熱心な人もおり、毎月参加している人もいた。彼女たちは非常に熱心であり、集う人がそこに何を求めているのかなども今後、調査していきたい。最終的には、複数のキリスト教団体、神道系の宗教団体を調査して、胎児の葬送についての考えを仏教系団体と比較し、水子供養について社会学的に考察したい。 なお、この研究の中間報告を2001年5月に行われる関西社会学会で報告する予定である。
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