2000 Fiscal Year Annual Research Report
現代日本農村社会の女性たちが作り出すネットワークと家・ムラとの緊張関係
Project/Area Number |
12710127
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Research Institution | Junsei Junior College |
Principal Investigator |
鶴 理恵子 順正短期大学, 保健科, 講師 (20227474)
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Keywords | 農家女性 / 労働の主体 / 男女共同参画 / パートナーシップ / 家族経営協定 / 生活改善運動 / ネットワーク / 主婦役割 |
Research Abstract |
本研究では、そのための研究方法として、関連文献により分析視点および枠組みを設定しつつ、フィールド・ワークを精力的に行った。上記のような活動をしてきた農家女性たちを訪ね、聞き取り調査を行った。地域的には岡山・鳥取・島根県の数箇所、および長崎県壱岐島を調査地に選んだ。また、全国に広がるネットワーク(「田舎のヒロインわくわくネットワーク」)についても、その代表世話人(やまざきようこさん)を訪ね、やまざきさんが夫と主宰する農業者・消費者を含む運動・学習体(「おけら塾」)の参与観察も行った。その結果、以下のようなことが明らかになった。 まず、大状況として、女性たちが自家の農業経営に参画することは半ば当然のこととみなされていること。その背景には、男女共同参画基本法および家族経営協定の締結推進といった一連の動きが、農村や農家においても「男女平等」を自明のこととする社会的雰囲気作りにつながっていることがうかがえた。しかし、実際には女性たちが「対等なパートナー」とはなりえていない現実もあった。 私が聞き取りを行った女性たちの多くは、戦後生まれで男女平等の教育を受け、農家の暮らしや農業に従事する前に、一度、農外就労を経験していることも多かった。さらに、夫とは対等な関係性を有している場合がほとんどであった。そのため、農家、農業を相対化して見ることが比較的容易であり、夫婦間でお互いを尊重しあいながら暮らしを作っていくことが可能となっていた。その中で、働く喜び、他者からの評価を得ること、自分の存在確認とアイデンティティの模索・確立を繰り返してきたようだった。そして、地域で仲間を作り、広げ、女性たちの活動を展開してきていた。そうした女性たちも、家およびムラとの緊張関係は避けられないが、夫・子ども、舅・姑の協力を得ながら、それを乗り越えている。私が聞き取りを行った女性たちは、小さな地域のリーダーから全国の農家女性たちのカリスマ的存在まで、さまざまなレベルであった。それでも、ある共通点はあるように思える。それは、結婚し子供を生み育て、家族を作り、それを基盤として農家女性としての行き方を花開かせている点である。これがその家に、そしてムラに、どっかと根を張り、暮らしている強さの源となっている。 平成13年度以降は、引き続き、補足調査を行い、学会報告および論文投稿の予定である。
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