2000 Fiscal Year Annual Research Report
地域社会における多文化主義に関する研究-「ムラの国際結婚」を事例として
Project/Area Number |
12710128
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
仲野 誠 鳥取大学, 教育地域科学部, 講師 (60301719)
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Keywords | 多文化主義 / エスニシティ / 地域社会 / 山村 / 国際結婚 / 家族 / 異文化接触 / 質約調査法 |
Research Abstract |
2年間の助成期間の初年度である本年度は、まず当該地域の歴史的考察を行った。これは、今日外国人妻の受け入れを可能にした当村の歴史的要因を明らかにするものであり、本研究の土台をなすものである。 本年度の調査によって明らかになったことは、当村は「異質な」人たちに対して閉鎖的・排他的な社会ではなく、むしろ「異質な」人たちが積極的な役割を果たしてきた地域であったことである。それは逆説的であるが、当村は昭和10年には農村更生協会の指定村に指定されたほどの窮乏村であったがために、かえって異質な人びとが交わる場所になったのだ。例えば、毎年の洪水の度やって来た隣村からの助け、農業指導のため駐在した小作官、「救村」を掲げてやってきたアメリカ人宣教師、賀川豊彦の「神の国運動」などが村に流入し、逆に出稼ぎ、娘「身売り」、奉公などという形で村人は村外に流出した。 その中で重要な役割を担ったのはクリスチャンである。昭和川期の困窮から脱するため、賀川の「神の国運動」に共鳴した村の幾人かの若者が異教であるキリスト教に改宗し、宗教を道具として用い、貧しい村の変革をめざした。例えば、立体農業(果樹栽培や畜産の導入による水稲単作からの脱却)、産業組合(後の農協)の創設、幼児教育の開始(教会付設の幼稚園の創設)、青年団活動の組織化など具体的な戦略をとって村の建てなおしを図る。 今日の当村における外国人妻の受け入れや多文化主義のシンボルになっている韓国文化のテーマパーク「高麗館」の建設も、同村のクリスチャンと韓国のクリスチャンの草の根レベルでの歴史的交流がその端緒となっているように考えられる。13年度は、この基礎的研究をもとに、同村における歴史的要因と今日的問題の連関性および同村における多文化主義政策の可能性と限界を分析する。
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