2000 Fiscal Year Annual Research Report
初等教育における学力保障と進級制度改革の日仏比較研究
Project/Area Number |
12710139
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Research Institution | Tokyo Gakugei University |
Principal Investigator |
藤井 穂高 東京学芸大学, 教育学部, 助教授 (50238531)
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Keywords | フランス / 義務教育 / 義務教育法 / 学力保障 |
Research Abstract |
標記の研究課題による研究の1年目として、初等教育の学力保障の前提となる、フランス特有の義務教育の理念を明らかにした。フランスでは、わが国の就学義務制とは対照的に、家庭で義務教育を施す自由が保障されているが、1998年に、「義務教育監督強化法」が成立し、就学義務制により子どもの学力を保障しようとする動向が見られる。今年度の研究ではこの点に焦点を絞り、次の点を明らかにした。 1.フランスにおいて1998年に成立した義務教育監督強化法は、家庭で義務教育を施そうとするものに対して、教育行政上の国の代理である大学区視学官が、各家庭において、国の定める基準に従って、学校教育に相当する教育を行われているか否かを監督し、監督結果によっては拘禁刑をもって罰するというものであり、子どもの教育を受ける権利を保障するためとはいえ、親の「教育の自由」を厳しく制約するものである。 2.こうした法律の成立は、宗教的セクトの危機から子どもを守り、その教育への権利を保障するのは国であり、子どちたちの良心の自由や人格の開花を培うのは共和国の学校のみであるとの立法者意思によるものであることを同法の審議過程から明らかにするとともに、その背景には、国家の強制により、公教育において理性や批判精神など真の意味での自由を獲得することを通して、国家への自由(参加の自由)に至るとの理念があることを論じた。 なお、同研究をまとめ、日本比較教育学会の紀要に投稿し、審査の結果、掲載が決定している。
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Research Products
(1 results)