2000 Fiscal Year Annual Research Report
ユニバーサル化時代の学校・大学におけるエリート教育の文献的研究-米英独仏との比較を通じて-
Project/Area Number |
12710143
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
山内 乾史 神戸大学, 大学教育研究センター, 助教授 (20240070)
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Keywords | エリート教育 / 才能教育 / 高等教育のユニバーサル化 / 個性に応じた教育 / ゆとり教育 / 大衆教育 / 競争原理 / 入学試験 |
Research Abstract |
本年度は二年計画の初年度として、研究計画調書に記載したとおり、日米英独仏のエリート研究関係図書ならびに日英のエリート形成のバックグラウンドを知るための政治体制他の関係図書を収集し、日英を中心にエリート教育の理念・目的・方法等について比較検討した。特に重点を置いた項目は、(1)エリート教育に関する世論、(2)エリート教育と教育制度全体との関係・整合性、(3)エリート(教育)と大衆(教育)との関係、(4)エリート教育が一極集中型で行われるか多極分散型で行われるか、(5)エリート教育に国家が関与することの可否、(6)英才教育との関係、(7)入試制度のあり方など、である。 特に英米に顕著に見られるように、近年、1970年代まで追求してきた平等性を出来るだけ損なわずに卓越性を求め、国家の再建を図るという戦略の中では、優れた人材をのばすシステムのあり方は国家の命運を握るものと考えられる。その一環として、公立学校の大幅な改革と私立学校に対する配慮がなされ、外部評価を通じた競争原理の導入が試みられてきた。一方日本では、一般には、しばしば「ゆとり教育」による学力低下の問題が取りざたされている。しかし、エリート教育ということに限定してみるならば、現在進行している教育改革は、教育改革国民会議の議論を見ても理解できるとおり、これを推進しようとするものと見ることができる。いうなれば、個性に応じた教育とは、つまり能力に応じた教育であり、エリート教育の根本理念とも通底するところがある。そこで問題となるのは、上述のように、学校教育の枠組みでやるのがいいのかどうか、国家が関与していいのかどうかということである。英国では基本的に私学セクターがこれを担っている。近年ヒトゲノム研究の進展に伴い復活してきた優生学的な議論も含め、米独仏のエリート教育システムとの比較を通じて次年度の研究を進め、報告書を作成したい。
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