2000 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12710144
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
白水 浩信 神戸大学, 発達科学部, 講師 (90322198)
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Keywords | ポリス / ドラマール / デュシェヌ / フランス / 18世紀 / 教育 / メルシェ |
Research Abstract |
1 ドラマール『ポリス論』分析 (1)ドラマール『ポリス論(Traite de la police)』(従来、『ポリス概論』と訳出)の初版(パリで出版)と第2版(アムステルダムで出版)を比較し、両者の異同を確認。ほぼ同一の記述内容であったが、第2版では若干の加筆および装飾等の簡略化が施されていた。 (2)第II巻から第IV巻にかけての各論の記述、「宗教」、「習俗」、「健康」について分析した。その結果、総じてこれらポリス的配慮が社会防衛と社会福祉という二つのパースペクティブに立脚し、貧困をはじめとした社会的周縁に教育的な働きかけを及ぼそうとするものであった点が判明した。 (3)特に(2)の事態は、第I巻「総論」でポリスが「親子の情愛」に集約され、「小国家」あるいは「小政府」をモデルとするものであるというドラマールの見解から端的に読み取ることができ、まさに『ポリス論』が18世紀フランスにおいて<教育国家論>としてあったことを顕著に示している。 2 デュシェヌ『ポリス法典』分析 『百科全書(Encyclopedie)』の「ポリス」記事でも重視されていた、デュシェヌ『ポリス法典(Code de la police)』は、その章構成からしてドラマール『ポリス論』を踏襲して著されたものであった。ただし、未刊であった『ポリス論』が一巻を構えて扱うことができなかった、教育や治安、救貧といった事項についてより詳しく、しかも端的な情報を与えてくれるものであった。18世紀フランスにあって「教育」とは、救貧や治安(防衛的観点)、そして国力の増進(福祉的観点)といったトータルな配慮のなかで生成していった点が、史料に即して明らかにすることができた。 3 明治期における西欧ポリス論の受容 後藤新平『國家衛生原理』を中心に、西欧ポリス論のわが国への受容について調査した。特に、ラートゲンが近代行政学の嚆矢としてドラマールに言及していた点は特筆され、フランス・ポリス論がドイツ・ポリツァイ学を経由して、日本の内務官僚、後藤において顕著な行政実務論として受容された経緯を解明した。しかも後藤において、ポリスの核心は「撫愛(Freunde)」と「威権(Gewalt)」という二つの局面において捉えられており、ドラマール以来の<教育国家論>としてのポリス論の考え方が貫徹されている点をも明らかにできた。
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