2001 Fiscal Year Annual Research Report
戦前期日本における治療教育の理論と実践に関する研究
Project/Area Number |
12710146
|
Research Institution | Wakayama University |
Principal Investigator |
山崎 由可里 和歌山大学, 教育学部, 助教授 (60322210)
|
Keywords | 治療教育学 / 感化教育 / 感化院 / 社会精神医学 |
Research Abstract |
今年度は、前年度からの資料収集および整理等の基礎作業をもとに分析を行い、以下のような研究成果をあげた。 (1)精神科医が実施した感化院入所児童調査の目的・方法論・調査結果、および調査結果に基づく提言などの整理およびそれらの分析を実施した。その結果、初期(1900年代)の個別具体的な感化院入所児童の実態把握から、大正デモクラシー期(とりわけ1920年代前半)においては不良・非行少年が発生する社会構造そのものの分析をも試みるという質的転換を迎えたことを解明した。また、これは、精神医学研究における社会精神医学的視点の萌芽の一斑を示していることを明らかにした。 (2)戦前期に知的障害児や精神病的児童等のために特別学級を開設した施設の実態調査。『神経学雑誌』『精神衛生』『感化教育』『児童保護』等の雑誌、および感化院(現:児童自立支援施設)の記念誌や沿革史誌などを収集・整理した。その結果、国立武蔵野学院、愛知学園、明石学園、波多学院、大阪修徳学院、広島修養院など特別学級開設の事実があることを確認した。また、それらの感化院での特別学級開設の時期は1920年代前半から高揚し、小学校での特別学級開設状況と酷似している点を明らかにした。そして、感化院内特別学級開設の要因は、a)感化教育向上のための「能力別」指導実施、b)内務省所管の感化教育の小学校化(義務教育化)志向、にあることを解明した。 (3)1920年代より特殊教育振興に尽力した川本宇之介の「都市教育」論において、治療教育的見地からの公衆衛生問題への着眼が看取されることを明らかにした。 これらの研究成果をもとに別紙(裏)のような研究発表を行った。
|
Research Products
(2 results)
-
[Publications] 山崎 由可里, 村瀬 桃子: "川本宇之介の欧米留学と「都市教育」研究"社会教育研究年報. 第15号. 191-200 (2001)
-
[Publications] 新海 英行編著 山崎 由可里: "『現代日本社会教育史論』分担「感化教育における教育的機能の深化と障害児問題の展開に関する研究」"日本図書センター. 457 (2002)