2000 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12710193
|
Research Institution | Kawamura Gakuen Woman's University |
Principal Investigator |
帆刈 浩之 川村学園女子大学, 文学部, 助教授 (40284278)
|
Keywords | 中国医学 / 華僑・華人 / 科学 |
Research Abstract |
近年、世界的に伝統医療の再評価が行われ、とくに歴史と体系性をもつ中国伝統医学は香港、台湾、シンガポール、アメリカ、カナダ、オーストラリア、イギリスなどで制度化が進行している。そのプロセスは各地で異なるが、一般的には中国医学の医師(中医師)に対する登録・資格認定・教育制度の確立、保険適用、安全性の確立などのための法律の整備によって正規の医療体系に組入れる作業である。 そうした制度化を推進している中医師は19世紀以来の伝統的チャイナタウンに暮らす在来の中医師ではなく、大陸の中医薬大学でなどで近代医学を含めた専門課程に学び、海外留学の経験を有するような新しいエリート中医師である。改革開放後における中国の影響力の拡大は大陸で教育を受けた中医師たちの海外発展という形で顕在化したのである。 19世紀中頃以降、東アジアや海外華僑社会で近代国民国家によって「非科学的」として否定された中国医学がその百年後には「科学的」に利用されるに至ったのである。これは東アジアにおける文明史の問題として歴史的に位置付ける必要があろう。一つは「近代」的価値観が東アジアにおいて果たした歴史的役割について、近代「科学」のイデオロギー性を中国医学の変遷の中に見出すことができる。もう一つは中国史の文脈における伝統文化と近代化の問題として、中国医学を海外華僑・華人を含む中国社会の文化システムの中で歴史的に探求することが求められている。
|