2000 Fiscal Year Annual Research Report
中世アイスランドにおける紛争と社会-『ストゥルルンガ・サガ』を中心して-
Project/Area Number |
12710198
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
阪西 紀子 一橋大学, 大学院・社会学研究科, 助教授 (80303030)
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Keywords | アイスランド / サガ / 北欧史 / 中世 |
Research Abstract |
研究の中心となる、『ストゥルルンガ・サガ』のテクストを検討する作業を進めると共に、関連する論文を収集し読むことを行なった。多少なりとも読み進めてみて、正直なところ、これまで『ストゥルルンガ・サガ』があまり研究されてこなかった理由がよくわかった。このサガでは、「古典的」とされる「アイスランド人のサガ」などと異なり、展開が唐突だったり、本筋とは無関係に見える脇筋が延々と続いたり、著作物としての完成度が低いことは事実である。サガを芸術作品と見たい人々にとって、これらは欠点でしかないかもしれないが、歴史研究者としては、その飛躍や一見瑣末なことへのこだわりが、他からはなかなか見えてこない、当時の人々の発想や観点を知る手掛かりになることを期待したい。 8月にノルウェーのオスロで開かれた国際歴史学会議への出席は、北欧関連の報告は思ったほど多くはなかったものの、北欧研究者との直接の交流や西欧中世史一般の最新の動向に触れることができ有益であった。その前後に訪れたスタヴァンゲル、オスロ、コペンハーゲンの各都市では、資料の収集に当たるとともに、関連する博物館や史跡を見学した。 最近、試訳の(後編)を発表するに際し、『ストゥルルンガ・サガ』のうちの1編である「大物グズムンドルのサガ」のテクスト全体を再度検討した結果、これまで見落としていたいくつかの点に気づき、人名、地名、出来事などの相互関係にかなりの注意を払わない限り、サガを本当には理解できないことを改めて感じた。
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Research Products
(1 results)