2000 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12710220
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Research Institution | National Museum of Japanese History |
Principal Investigator |
千田 嘉博 国立歴史民俗博物館, 考古研究部, 助手 (70226695)
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Keywords | 城 / 城下町 / 戦国期 / 国家 / ニュージーランド / パ |
Research Abstract |
本年度の研究では、計画に従って九州の宮崎地域で、宮崎城ならびに都於郡城の資料に関する調査を行った.両城は戦国期〜織豊期にかけた拠点城郭で、文献史料からも大規模な城下を構成したことが知られている。宮崎城では山中に残る城郭遺構を踏査し、城内に武家屋敷群が建設されていた様相を把握することができた。また地名や聞き取り調査から、文献史料で分かる山麓の諸施設の配置関係などを推測することが可能になった。都於郡城では分立性が高い構造を確認できた。 また秋田県の脇本城では、やはり分立性の高い山城に屋敷群がならび、発掘成果から貿易陶磁の比率が高く、土師器をほとんどもたない食器構成を知ることができた。いずれも列島中央の城郭とは構造や内部構成・生活様式に大きな違いがあり、こうした差異を正面から評価しながら戦国・織豊期の社会を読み解く作業の重要な足がかりを得た。 さらに比較調査ではニュージーランドのマオリ族が築いたパを踏査した。時期的には日本の中世・戦国期と重なり、独自のパを核とした部族社会の成熟を観察できた。ただし18世紀のヨーロッパ人との接触以降、ことに19世紀の激しい対イギリスとの戦争を契機に、パはヨーロッパ型の要塞を取り入れた姿に変貌した。国家形態の転換期に出現した要塞型パは、城郭プランの変化が示すものを考えるとき、きわめて示唆的である。こうした本年度の成果を基礎として、次年度の調査を重ねて、課題に迫っていきたい。
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