2000 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12710241
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Research Institution | Gunma National College of Technology |
Principal Investigator |
小野 泰央 群馬工業高等専門学校, その他部局等, 講師 (90280354)
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Keywords | 平安朝 / 漢詩文 / 天暦期 / 和漢比較文学 |
Research Abstract |
天暦期の中級官人は、不遇感を抱いていたにもかかわらず、痛烈な朝廷批判を行いませんでした。白楽天の「諷諭詩」を受容したものは、源兼明・源順・橘直幹の作品にしか見られず、特に源兼明に至ってはその不遇感と関連して、白楽天の「諷諭詩」の思想を踏まえて痛烈な社会批判を行っています。 儒者や受領層は藤原氏の高官位独占によって思うように昇進を果たせなく、そんな不遇を打開するために官人は申文を書いて直訴したのですが、申文には厳密に考えると、矛盾する部分が少なくありません。それは偽った公文書を提出したことになりますが、そこにはそうせざるを得なかった当時の官人の苦悩が存在するのです。このことを『本朝粋』の申文を中心にして探りました。 また「式部省関係資料」を作成し、現存する資料を再編成することで、式部省の卿・大輔・少輔・大丞・少丞・大録・少録・文章博士を編年で集成し、当時の学者の全体像を掴むという作業を行いました。 平安官人にとって最も大切なことは、社会的地位の向上であったはずです。官人特に儒者においては、その意識が彼らの作品から窺えるのですが、水面下にはその何倍もの彼らの意識・生活背景・社会情勢が潜んでいるのです。たしかに文学作品に現れた感情は、官人としての意識の一部分でしありませんが、しかしそれは最も凝縮した部分であるとも言えます。その文学作品に現れた平安人の思想のエッセンスと、社会状況の二面を捉えることによって、儒者および文人などの官人の現状が明らかになるという展望を得ました。
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