2000 Fiscal Year Annual Research Report
18世紀イギリスにおける小説と科学の多層的構造に関する新歴史主義的研究
Project/Area Number |
12710248
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Research Institution | Otaru University of Commerce |
Principal Investigator |
吉田 直希 小樽商科大学, 言語センター, 助教授 (90261396)
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Keywords | 18世紀イギリス / 小説研究 / 新歴史主義 / 科学 |
Research Abstract |
本年度の研究では、18世紀の文学および科学に関する新しい理論を構築するため、次の2項目を重点的に研究した。 1.科学と文学のFictionalityに関する考察 まず、17、8世紀における科学と文学の相関関係を新歴史主義的観点から考察した。Boyle(New Experiments)やNewton(Opticks)らによる"fiction"の定義が、いわゆる文学テクストの虚構性とは異質のものであり、科学/小説の二項対立の形成過程で生み出された歴史的な概念であることを実証的に確認した。この作業をもとに、"Between'We'and'Mankind':Kant's Enlightenment of Fictionality"(2000)を再検討し、同年9月にはStanford大学にて研究成果の報告を行なった。またJohn Bender教授らと新しい理論の可能性について、共同研究を継続することを確認した。 2.ポストコロニアル理論に基づく新歴史主義批評の再検討 1において得られた科学と文学に関する多層的構造の理論を具体的な作品読解を通して検証した。文学テクストとしてDefoe,Fielding,Richardson,Walpole,Lennoxらの小説を取り上げ、文学におけるfactualityの否定が同時代の科学におけるfictionalityの構築を生み出していく過程を考察した。その際、ポストコロニアル理論が問題とする階級・人種・ジェンダーの絡み合いを科学/文学の双方で批判的に検討する必要が明らかになり、10月には日本英文学会北海道支部のシンポジウムにおいて発表・討論を行った。
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