2000 Fiscal Year Annual Research Report
17世紀英文学におけるブリテン像の形成に関する考察
Project/Area Number |
12710251
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
廣田 篤彦 横浜国立大学, 教育人間科学部, 助教授 (40292718)
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Keywords | 英文学 / ジェイムズ朝 / ナショナリズム / ブリテン |
Research Abstract |
本年度は主に17世紀前半、とくにジェイムズ朝期におけるブリテン像の形成とその文学における表象に関する研究をおこなった。具体的には、 i)ジェイムズー世即位後にロンドン市中において演じられたページェント群(特にThe Magnificent Entertainmentならびに、The Triumphs of Re-united Britannia)を分析することにより、テューダー朝からステュアート朝への移行期において、ブリテンという概念が持つことになった新たな地理的・歴史的意味がどのように表象されているかを考察した。特にこれらのページェントの中では、ブリテンという土地が国王以上に国民国家の中心として相応しいことが主張されていることに着目した。 ii)シェイクスピアのCymbeline並びに、ほぼ同時期に作られた、ローマ時代のブリテンを舞台とした民衆劇(特に、ジョン・フレッチャーのBonducaならびにR.A.,Gent.のThe Valiant Welshman)を比較することにより、これらの劇作品の中で、古代ブリテンがローマ帝国と対比され、世界帝国の周縁として、しかもその範囲が不確定なものとして表されていることを考察した。 更に、これらの文学作品の中では、ブリテンという概念が、ジェイムズ一世即位後のイングランドとスコットランド統合計画や絶対王政への指向といった歴史的文脈に対応した形で見直されていることを考察した。 これらの研究成果は未だ出版するに至っていないが、2001年3月に米国Claremont Graduate Universityに提出した博士論文の一部にはこの成果が反映されている。
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