2000 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12710255
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
尾崎 久男 大阪大学, 言語文化部, 講師 (60268381)
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Keywords | 古期ゲルマン諸語 / frummen / Tatian / Heliand / Otfrids Evangelianbuch / 古期高地ドイツ語 / 古期低地ドイツ語 / 北海ゲルマン語群 |
Research Abstract |
筆者はかねてより古期ゲルマン諸語において,ゲルマン語*fram,ひいてはインド・ヨーロッパ語*pr-から派生した動詞群を網羅的に調査しているが,本年度は特に古期ドイツ語動詞frummen(frummian)およびその同根語fremen(fremmian)が,九世紀に書かれたと推定されるTatian,Heliand,およびOtfridにおいて,どのように使用されていたかを統語的かつ意味的に考察した。要約すれば, 1)高地ドイツ語では,frummenとfremenが完全な相補分布をなしていて,低地ドイツ語ではfrummianの方がかなり優勢だが,fremenも少数ながら使用されている, 2)本コーパスの頁数や行数を考慮すれば,高地ドイツ語ではこれらの動詞がほとんど使われていないに等しいが,逆に低地ドイツ語ではかなり高い確率で用いられている, 3)九世紀のドイツ語において,現代には見られない他動詞(II)型が頻度数の上で自動詞(I)型を凌駕していて,特に低地ドイツ語ではII型の中でも普通名詞(IIb)型より動作名詞(IIa)型の方が頻繁に出現している, 4)高地ドイツ語では,IIa型と共起する目的語のほとんどが「肯定的」な行為/物であるにもかかわらず,低地ドイツ語では半数近くが「否定的」な行為/物を表わしている。 今後は上記の調査結果を踏まえて,古期ドイツ語に断片的に残存している諸作品,ザンクト・ガレンの修道士ノトカー(Notker Labeo)のさまざまな著作集などを調査したうえで,いわゆる北海ゲルマン(ingwaonisch)語群における比較調査,さらに古期ノルド語を加えて「頭韻詩」を中心にした調査を展開してゆく。
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Research Products
(1 results)