2000 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12710263
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
野田 学 明治大学, 文学部, 助教授 (60272473)
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Keywords | 言語と身体 / 英語18世紀演劇 / 書記言語 / 身体言語 / 情念 / 言語態 |
Research Abstract |
研究者は、2001年5月出版予定の「書記言語と身体言語の棲み分けとねじれ:トマス・シェリダンの場合」において、書記言語と身体言語間の「棲み分けとねじれ」現象を18世紀英国における弁論術運動の代表者であるシェリダン(1719-88)に着目しつつ考察した。 音声の調子、弁者の静的外見そして身ぶりよりなる身体言語は、書記言語では不十分とされる分節性を補填・強化するだけの従属的存在と見なされていた。しかしシェリダンに見られるように18世紀英国の弁論術運動においては、身体言語の書記言語に対する優越性を確立すべく、以下の2点が主張される。 1.身体言語は書記言語に身体的補完が行われたところの完成品である。 2.最終的完成品としての演術から書記言語の部分を抜き取ってしまった意味での「純粋な」身体言語は、情念との対応関係が「自然」にもとづく分、書記言語より普遍的であり、かつ感受性により強く訴えることができる。 興味深いのは、この種の身体言語が、本来表象対象であるはずの社会的情念を「より高次の情念」として逆形成してしまう点にある。メディアがメッセージを産む、といっても良いかもしれない。この議論は、言語態の棲み分け論が、その内部でねじれを生じていくという18世紀的な展開を示しているのである。 以上の研究にとって、夏期の大英図書館での資料収集・調査は非常に有効だった。また、研究と現在のアクチュアリティとの接点を失わないために、気鋭の演劇実践者の取材も積極的におこなった。その一人であるロイヤル・シェイクスピア・カンパニー演出家グレゴリー・ドランの取材結果は、インタビュー記事としてすでに発表済である。またそれによって得られた知見は、20世紀後半の英国における古典の文化社会的位置づけを巡る考察としてやはり同メディアに発表されている。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] 野田学: "古典という名のジレンマ"シアターアーツ. 12号. 37-44 (2000)
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[Publications] 野田学(聞き手・構成): "現役演出家のプロフィール8:グレゴリー・ドラン"シアターアーツ. 12号. 104-107 (2000)
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[Publications] 藤井貞和,エリス俊子 編 野田学(共著): "シリーズ言語態第2巻 創発的言語態(野田単著論文名:「書記言語と身体言語の棲み分けとねじれ:トマス・シェリダンの場合」)"東京大学出版会(予定). (2001)