2000 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12710266
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
辻部 大介 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 助手 (30313183)
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Keywords | 理神論 / 18世紀 / 地下文書 / マルブランシュ / ロベール・シャル / 宗教批判 / ディドロ |
Research Abstract |
初年度にあたる今年はまず、地下文書研究の現在の動向を把握するため、印刷刊行物のコーパスを整備した。1993年から毎年刊行されているLa Lettre clandestine誌などに拠りながら、系統的な書誌を作成し、欠けている文献を収集した。同時に、理神論関係の主要なテクスト・研究書を選定し、調査にとりかかった。今年度はとりわけ、マルブランシュの影響に着目し、かれの思想が、次世代の読者に引き継がれつつ変容をこうむることによって理神論の成立に寄与した可能注を探った。Frantext、Voltaire Electroniqueといったテクストベータベースを利用して、ヴォルテール、ダランベールら、18世紀の主要な著作家に現れるマルブランシュへの言及箇所を検索し、その用例を分析したが、なかでも、18世紀を通じて宗教批判の潮流に広汎な影響をおよぼしたロベール・シャルの『マルブランシュ神父へ送る宗教についての異議』の読解をとおして、理神論を構成する主要な論点を、キリスト教教理との対立関係において洗いなおす作業には、多くの時間があてられた。 さらに、理神論と近接する宗教批判の潮流である、無神論をも視野に入れるべく、理神論から無神論へと転じた思想家の代表としてディドロに注目し、その理神論期(『哲学断想』)、懐疑論期(『懐疑主義者の散歩』)、唯物論期(『ダランベールの夢』)の諸著作を比較検討する作業にとりかかっているところである。
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